論文紹介

研究代表者

塚谷 裕一

所 属

東京大学大学院理学系研究科

著 者

Gorou Horiguchi, Almudena Mollá-Morales, José Manuel Pérez-Pérez, Kouji Kojima, Pedro Robles, María Rosa Ponce, José Luis Micol, Hirokazu Tsukaya
(堀口吾朗、Mollá-Morales Almudena、Pérez-Pérez José Manuel、小島幸治、Robles Pedro、Ponce María Rosa、Micol José Luis、塚谷裕一)

論文題目 Differential contributions of ribosomal protein genes to Arabidopsis thaliana leaf development
(シロイヌナズナの葉の発生における種々のリボソームタンパク質遺伝子の役割の違い)
発表誌 The Plant Journal 65, 724-736, 2011
要 旨  リボソームはmRNAの塩基配列情報を翻訳しタンパク質の合成を担う極めて重要なタンパク質とRNAからなる複合体です。活発に増殖している細胞ではタンパク質の合成も活発ですが、その大半はリボソーム合成に当てられています。そのため、リボソームタンパク質遺伝子の欠損変異株では、細胞増殖がうまく進まず、ひどい場合には致死になる場合もあります。
 リボソームは約80種のリボソームタンパク質と4種のrRNAから構成されています。私たちはシロイヌナズナを用いて様々なリボソームタンパク質遺伝子が欠損した突然変異株を比較し、葉の発生過程を解析しました。その結果、細胞増殖が不活発になるだけでなく、as2という転写制御因子の一種が欠損した変異株にこれらリボソームタンパク質の欠損が加わると、本来表と裏がはっきりと区別できる平らな葉が、裏側の性質だけになって棒状化してしまうことを見いだしました。興味深いことに、細胞増殖には特段の影響を及ぼさないのに、葉の表裏の表現型には強い効果を持つリボソームタンパク質欠損変異や、その逆の性質を示す変異株も見いだされました。これらの結果は、リボソームはmRNAの全てを平等に翻訳するわけではなく、個々のリボソームタンパク質ごとに、細胞増殖や葉の表裏の決定など葉の発生に関わる特定のmRNAを選択的に翻訳する、という可能性を示唆するものです。
図1 as2 rps6a2重変異株はほとんどの葉が棒状化する。中央はシュート頂分裂組織。
研究室HP http://www.nibb.ac.jp/%7Ebioenv2/indexj.html
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/bionev2/top_j.html