論文紹介

研究代表者 町田泰則 所 属 名古屋大学理学研究科生命理学専攻
著 者 Takashi Soyano, Siripong Thitamadee, Yasunori Machida, and Nam-Hai Chua
(征矢野敬、ティアマディ・シリポン、町田泰則、ナム-ハイ・チュア)
論文題目 ASYMMETRIC LEAVES2-LIKE19/LATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAIN30 and ASL20/LBD18 Regulate Tracheary Element Differentiation in Arabidopsis
(シロイヌナズナ において ASL20/LBD18 は管状要素(導管細胞)の分化を制御する)
発表誌 The Plant Cell 20: 3359-3373 (2008)
要 旨  シロイヌナズナの ASYMMETRIC LEAVES2 (AS2)/ LATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAIN (LOB) DOMAIN ファミリーは植物固有の核タンパク質をコードしている遺伝子ファミリーである。このファミリーは、AS2 を含めて 42 のメンバー[ASYMMETRIC LEAVES2-LIKE1 (ASL1) 〜 ASL41と命名されている]を含み、いくつかのメンバーは植物の発生や形態形成に関わっていることが報告されている。本論文では、互いに構造的によく似ているASL19/LBD30ASL20/LBD18 の機能について研究した。これらの遺伝子は、植物体の中ではともに未成熟な管状要素で発現していた。この発現は、管状要素の分化に必要な転写因子と言われている VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN PROTEIN6 (VND6) と VND7 に依存していた。また、ASL19ASL20 を過剰発現すると維管束系ではない柔組織の細胞が管状要素様の細胞に分化した。この時 VND7 が異所的に発現するようになった。一方、ASL20 にリプレッサードメインを融合したコンストラクトを ASL20 プロモーターにより発現させると、異常な管状要素が形成された。これらの結果は ASL19/ASL20 が、管状要素分化にとって正の因子であることを示している。我々は、以上の結果を総合して、今回の論文では、管状要素の分化は、図1に示すようなポジティーブ・フィードバックを含む経路により制御されていることを提唱している。
図1図1 ASL19, ASL20 による管状要素分化の制御系のモデル
ASL20 遺伝子はオーキシンにより転写が誘導されることが知られている。
研究室HP http://www.bio.nagoya-u.ac.jp:8001/~yas/b2.html