論文紹介
研究代表者 |
島本 功 |
所 属 |
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 |
著 者 |
Komiya, R., Ikegami, A., Tamaki, S., Yokoi, S. and Shimamoto, K. (小宮怜奈, 池上顕子, 玉置祥二郎, 横井修司, 島本功) |
論文題目 |
Hd3a and RFT1 are essential for flowering in rice.
(Hd3aとRFT1はイネの開花を制御する重要な遺伝子である) |
発表誌 |
Development 135: 767-774 (2008) |
要 旨 |
イネは、日の長さが短くなると開花が誘導される短日植物で、Heading
date 3a (Hd3a) が、短日条件下で、開花を促進する因子として機能している。RICE
FLOWERING LOCUS T1 (RFT1) は、Hd3aともっとも相同性が高いファミリー遺伝子であるが、Hd3aを含めたファミリー遺伝子の変異体は知られておらず、RFT1の機能は明らかとなっていない。
我々が作出したdouble RFT1-Hd3a RNAi個体は、300日経ても開花しないことから、Hd3aとRFT1がイネの開花を制御する重要な遺伝子であることを明らかにした(図1)。また、Hd3a
RNAi個体では、通常、野生型で発現の低いRFT1の発現が著しく上昇し、開花したことから、RFT1が新規開花促進因子であることを明らかにした。さらに、RFT1の発現上昇時には、RFT1転写開始点付近で、H3K9
アセチル化の上昇がみられたことから、RFT1の発現上昇には、ヒストン修飾を介したクロマチン構造の変化を伴う可能性も示唆された。我々は、下流因子の解析も含めたHd3aとRFT1
によるイネの開花制御機構のモデル図を提唱している (図2)。
 図1RNAiを用いた RFT1,
Hd3aの機能解析。
RNAi個体における Hd3a (A)と RFT1 (B)の発現. Hd3a
RNAi個体は、野生型より約30日開花が遅延する(C). Double RFT1-Hd3a RNAi個体は300日経ても開花しない(C,
D).
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 図2 RFT1と Hd3aによるイネ光周性開花制御のモデル
野生型では、短日条件で、 Hd3a の発現が誘導され、さらに下流の OsMADS14,
OsMADS15 の発現が上昇し開花する. Hd3a RNAi個体では、クロマチンの構造変化を伴い、 RFT1
の転写が著しく誘導され開花する. double RFT1-Hd3a RNAi個体では、300日しても開花しないことから、 Hd3a
と RFT1 は重要な開花促進因子であることが明らかとなった。
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研究室HP |
http://bsw3.naist.jp/simamoto/simamoto.html |
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