第28回論文紹介(2016.11更新)
- グループ名
- 脳回路機能学グループ
- 著者
-
石川由希、青沼仁志、佐々木謙、三浦徹
- タイトル(英)
- Tyraminergic and Octopaminergic Modulation of Defensive Behavior in Termite Soldier
- タイトル(日)
- 兵隊シロアリの防衛行動に対するチラミンとオクトパミンによる調節
- 発表された専門誌
- PLoS ONE, 11(5): e0154230 (2016)
社会性昆虫であるシロアリのコロニーには、コロニーの防衛に特化した兵隊カーストが存在する。兵隊は発達した武器形質をもち、外敵に積極的に攻撃する。シロアリはアリなどの外敵からの捕食に常に脅かされているため、防衛に特化した兵隊はコロニーの生存に必須である。兵隊は、攻撃性の低いワーカーと同一のゲノムを持つにも関わらず、ワーカーより顕著に高い攻撃性を示す。しかし兵隊がどのような機構によって高い攻撃性を実現しているのかはこれまで全くわかっていなかった。 この論文で私たちは、神経活性物質であるチラミン(tyramine)とオクトパミン(octopamine)が兵隊の高い攻撃性をもたらしている可能性を初めて示した。材料には、体サイズが大きく扱いやすいオオシロアリ(Hodotermopsis sjostedti)を用いた。高速液体クロマトグラフィを用いて、兵隊とワーカーの神経活性物質量を比較すると、脳内のチラミン量、食道下神経節内のチラミン量とオクトパミン量が兵隊で高いことがわかった。さらに、免疫染色を用いてチラミン/オクトパミン性ニューロンを可視化すると、いくつかのニューロン群が兵隊特異的に肥大化していることがわかった。チラミンを投与したワーカーが、兵隊のように高い攻撃性を示すようになったことから、これらの神経活性物質の量の違いにより兵隊とワーカーの攻撃性の違いが生じている可能性が高い。

今後の予定