論文紹介

第26回論文紹介(2016.1更新)

グループ名

超分子機能学講座 生体膜機能グループ

著者

竹川宜宏、西山雅祥、金関剛史、金井保、跡見晴幸、小嶋誠司、本間道夫

タイトル(英)
Sodium-driven energy conversion for flagellar rotation of the earliest divergent hyperthermophilic bacterium.
タイトル(日)

最も初期に進化分岐した超好熱性細菌べん毛回転のナトリウムイオン駆動性

発表された専門誌

Scientific Reports・5(5) ・12711・2015

Aquifex aeolicusは、最大95°Cで生育可能な超好熱性細菌である。A. aeolicusは他の細菌と同様にべん毛遺伝子を持ち、細胞の極から生えたべん毛を使って85°Cで約90μms-1で遊泳することを明らかとした。A. aeolicusのべん毛運動能を詳細に解析するため、べん毛モーターの固定子タンパク質をコードするmot遺伝子(motAおよびmotB)について、A. aeolicus由来のものを大腸菌mot欠損株内で発現させた。A. aeolicus由来MotAとペリプラズム領域を大腸菌由来のものに置換したキメラMotBとの共発現により、大腸菌はわずかに運動能を獲得した。A. aeolicus由来MotAの細胞質側領域内の点変異により、その運動能は著しく上昇した。この大腸菌を用いた機能解析系を用いることで、A. aeolicusのべん毛モーターはNa+を駆動力としていることを明らかにした。超好熱菌由来のモータータンパク質は、生物進化において最古のモータータンパク質の性質を示すと考えられ、原始の細菌はNa+をエネルギー源としてべん毛モーターを回転させていたことが示された。Na+駆動型べん毛遺伝子は、初期分岐細菌から後期分岐細菌へと水平伝播されたこと、べん毛モーターの回転力発生のための固定子-回転子間相互作用は進化の過程で変化していないことが示された。

図1:好熱性細菌べん毛モーターのナトリウムイオンを使ったエネルギー変換

超好熱性細菌のエネルギー変換ユニット(固定子)を、大腸菌モーター内で再現することに成功した。通常の大腸菌がナトリウムイオンとは関係なくモーターを回転させるのに対して(左グラフ青)、超好熱性細菌A. aeolicusのエネルギー変換ユニット(固定子)は、ナトリウムイオンに依存してモーターを回転させる(左グラフ赤)。大腸菌は水素イオン(H+)を使ってモーター回転のためのエネルギー変換を行うのに対して、細菌の祖先ではナトリウムイオン(Na+)を用いてエネルギー変換を行っていたことが示唆された(右模式図)。

図2:進化過程におけるべん毛モーターのエネルギー源の変遷の予想

進化初期に分岐した超好熱性細菌が、Na+駆動型の固定子を持っていることから、細菌の祖先は、まずNa+駆動型のモーターを獲得した。進化の比較的初期の段階で、モーターはNa+駆動型からH+駆動型へと転換され、現在大腸菌などの多くの細菌においてはH+駆動型が主流となっている。またビブリオ菌やコレラ菌などの一部の細菌ではNa+型固定子の水平伝播により、Na+駆動型モーターが再獲得された。

カレンダー

今後の予定


pagetop