論文紹介

第26回論文紹介(2016.1更新)

グループ名
生体応答論グループ
著者

森岡翔、佐井和人, 大森英美理、池田裕香、松本邦弘、辻順

タイトル(英)
TAK1 regulates hepatic lipid homeostasis through SREBP
タイトル(日)
TAK1キナーゼはSREBPを介して肝臓における脂質代謝を制御する
発表された専門誌
Oncogene In press

TAK1は生体内で細胞死制御に重要な役割を果たしているが、前立腺癌やB細胞リンパ腫などの様々な癌において、TAK1の変異が発見されている。また、マウスの肝細胞でTAK1を欠失させると、肝細胞癌の形成が誘導される。この癌化の原因に、TAK1による細胞死の制御とは異なる経路が関与していることが想定されたが、そのメカニズムは明らかではなかった。
 中性脂肪とコレステロールが肝臓に蓄積すると、癌形成を促す。肝細胞特異的なTAK1欠失マウスでは、この中性脂肪の蓄積と、血中コレステロールの増加が観察された。さらに、TAK1結合因子として、脂質合成に重要なSREBP転写因子を同定した。以上のことから、TAK1はSREBPを制御することで肝臓の脂質合成を調節し、肝細胞癌の発生を防いでいるという仮説を立て、検討を進めた。その結果、TAK1がキナーゼ活性依存的にSREBPを抑制すること、TAK1を抑制するとSREBPの活性が顕著に増加すること、さらにTAK1を欠失した肝臓においてSREBPが過剰に活性化されることが明らかになった。阻害剤を用いてSREBPを抑制すると、中性脂肪とコレステロールの蓄積、癌のマーカーであるH19遺伝子の発現が抑制された。

 以上の発見から、SREBPがTAK1の新規ターゲットであることが明らかとなり、このTAK1-SREBP経路が肝細胞癌の新しい治癒標的となる可能性が示された。
図1:

生体内において恒常的に生産されるサイトカインはTAK1とSREBPを活性化する。TAK1はSREBPの活性を制御することで、肝臓における脂質合成を調整している。この機構が破綻すると、SREBPの活性が上昇し、過剰な脂質合成が誘導され、脂肪肝、さらには肝細胞癌の形成を促す。

カレンダー

今後の予定


pagetop