論文紹介

第26回論文紹介(2016.1更新)

グループ名
分子神経生物学グループ
共同研究グループ
生殖分子情報学グループ、植物分子シグナル学グループ
著者

吉田 篤志、中野 俊詩、鈴木 孝征、井原 邦夫、東山 哲也、森 郁恵

タイトル(英)
A glial K+/Cl- cotransporter modifies temperature-evoked dynamics in C. elegans sensory neurons
タイトル(日)
線虫グリア細胞で機能するK-Cl共輸送体は感覚ニューロンの刺激依存的な活動動態を制御する
発表された専門誌
Genes Brain and Behavior・doi: 10.1111/gbb.12260・2015

K-Cl共輸送体は脳•神経系で広く発現するタンパク質であり、脳機能の調節に重要な役割を担っていると考えられている。これまでに、K-Cl共輸送体の神経細胞における役割が明らかにされつつあるが、一方で、グリア細胞で発現するK-Cl共輸送体が脳•神経系の機能をどのように調節しているのかは明らかになっていなかった。
 本研究では、線虫C. elegansのK-Cl共輸送体がグリア細胞で機能して、感覚ニューロンの活動動態を制御していることを見いだした。K-Cl共輸送体をコードするkcc-3遺伝子は温度学習行動に必須であり、KCC-3タンパク質は、温度受容に主要な役割を担うAFD感覚ニューロンの感覚末端を包み込むグリア細胞で発現していた。遺伝学的・生理学的な解析から、グリア細胞におけるKCC-3タンパク質がAFD温度受容ニューロンの温度刺激依存的な神経活動を制御することで、温度学習行動を制御していることを明らかにした。
 本研究は、これまでほとんど未知であったK-Cl共輸送体のグリア細胞における機能を明らかにしたものであり、グリア細胞におけるK-Cl共輸送体が細胞非自律的に感覚ニューロンの神経活動を調節する機構を示した。本研究成果を端緒として、今後、グリア細胞と神経細胞の機能的な相互作用機構がさらに解明されていくものと期待される。

図1:

(a) 線虫頭部の模式図。 (b)AMshグリアによるAFD感覚ニューロンの制御モデル。K+/Cl-共輸送体KCC-3がAMshグリアとAFDニューロンの細胞間隙にK+を供給し、AFD ニューロンからのK+流出を適切に制御している。kcc-3 変異体では、KCC-3による細胞間隙へのK+の供給がなく、AFDニューロンからのK+流出の駆動力が過剰となることで、神経活動の異常が引き起こされる。(c)AFD感覚ニューロンの温度応答性。線虫は20℃で飼育され、14℃-24℃の温度上昇刺激が与えられた。野生型のAFDは飼育温度付近で神経活動を示し、その後ゆるやかに活動を低下させる( 左)。 一方で、kcc-3変異体のAFDは飼育温度付近で神経活動を示すものの、その後すぐに活動が見られなくなっており、適切な温度応答が出来なくなっている(右)。

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