第22回論文紹介(2014.1更新)
- グループ名
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超分子機能学講座 超分子構造学グループ
- 著者
- 滝口陽子、伊藤俊樹、辻田和也、山田駿介、柳澤美穂、藤原 慶、山本暁久、市川正敏、滝口金吾
- タイトル(英)
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Physicochemical analysis from real-time imaging of liposome tubulation reveals the characteristics of individual F‑BAR domain proteins
- タイトル(日)
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リアルタイム観察で明らかにされたF-BARドメインファミリーに属する膜変形蛋白質の個性
- 発表された専門誌
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Langmuir・29・328−336・2013
F-BARドメイン蛋白質ファミリーは、F-BARドメインを介して膜に結合し、生体膜の形状動態の調節や膜小胞輸送に関与していると考えられている一群の蛋白質である。実際、電子顕微鏡観察を用いた多くの先行研究によって、F-BARドメインが膜突起形成を誘導することが明らかにされている。しかしながら、変形の過程や形成された膜突起の動態が観られていないために、その詳しい膜突起形成機構や各F-BARドメイン蛋白質の役割の違いについてはまだ分かっていなかった。本研究では光学暗視野顕微鏡を使用して、異なる4種類のF-BARドメイン蛋白質(FBP17、CIP4、PSTPIP1、Pacsin2)による巨大リポソームの形態変化を直接リアルタイム観察することによって、膜突起の生じる過程を明らかにし、形成された膜突起の物性を調べた。その結果、膜突起の形成伸長の過程と形成された膜突起の性質は4種類の蛋白質間で異なっていた。FBP17とCIP4は、個々のリポソームの表面全体に突起を多数同時に生じさせた(図1上)。また形成された突起は固かった。一方、PSTPIP1とPacsin2は、個々のリポソームの表面の一部のみから限られた本数の長い突起を伸長させた(図1下)。そして形成された突起は柔らかく曲がり易かった。以上の結果は、各F-BARドメイン蛋白質が固有の反応過程や機構に従って膜変形を行っていることを示している。

今後の予定