論文紹介

第9回論文紹介(2007.6更新)

グループ名
生体構築論 分子神経生物学
著者
谷澤欣則、久原篤、稲田仁、児玉英志、水野貴文、森郁恵
タイトル(英)
Inositol monophosphatase regulates localization of synaptic components and behavior in the mature nervous system of C. elegans.
タイトル(日)
C. elegansの成虫期神経系においてイノシトールモノフォスファターゼがシナプス構成分子の局在と行動を制御する
発表された専門誌
Genes Dev. 2006 20: 3296-3310

行動を支配する神経系が正常に機能するためには、神経細胞内における分子局在の正しい制御が必要である。特に神経細胞間の情報伝達を担うシナプスと呼ばれる構造が正しく局在する事は重要であるが、分子機構はほとんど明らかにされていない。我々は、単純な神経系を持つモデル生物C. elegansを用いて、RIA介在神経と呼ばれる単一の神経細胞内におけるシナプス分子局在と、RIA介在神経が関わる行動との統合的な解析を行った。野生型個体のRIA介在神経においては、シナプス構成分子が細胞内の特定領域に局在し、正しく機能する事によって正常な行動を実現している(図)。我々は、イノシトール合成酵素TTX-7/IMPaseの機能が欠損した変異体においてはRIA介在神経におけるシナプス構成分子の局在異常が見られ、同時に行動にも異常が見られる事を発見した(図)。変異体の示す異常はイノシトールの投与によって回復した事から、シナプス構成分子の局在にはイノシトールが重要である事が示唆された。また、ヒトIMPaseは躁うつ病との関連が推測されている分子である。野生型個体に躁うつ病治療薬であるリチウムを与えた所、変異体が示すのと同様な異常が誘発され、その後のリチウム除去により異常が回復することが観察された(図)。さらなる研究により、シナプス分子の局在機構、躁うつ病の分子機構に関し新たな知見が得られると期待される。

図1:

左側はRIA介在神経における正常なシナプス分子(緑色で示す)の局在と行動の模式図。これらの表現型はリチウム投与などの処理によって共に異常になる(右側)。

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