論文紹介

第1回論文紹介(2003.4更新)

グループ名
機能調節学 超分子システム学
著者
藤原敬宏、Ritchie, Kenneth、村越秀治、K. Jacobson、楠見明弘
タイトル(英)
Phospholipids undergo hop diffusion in compartmentalized cell membrane.
タイトル(日)
リン脂質はコンパートメント化された細胞膜中でホップ拡散している
発表された専門誌
J. Cell Biol. 157, 1071-1081 (2002). [PubMed]

「細胞膜は、膜タンパク質が脂質の海に浮かんでいるような構造をもつ」というのが、ここ30年来の、教科書の記述であった。シグナル受容体などは、その中で動き回って他のシグナル分子と衝突し、情報伝達をおこなうと考えられてきた。しかし、細胞膜上では、受容体が、信号(リガンド)を受け取った位置にとどまって空間情報を保持したり、また、多数の膜分子が特定の場所に集合して協同的に働いたりする仕組みがある。これらは、細胞膜が単純な液体ではないことを示唆している。では、一体、カオスの海の中で、どのようにして秩序だった働きが可能になっているのだろうか?

本研究では、細胞膜を作る基本分子であるリン脂質の運動を、1分子毎に、ナノメートルの空間精度で、しかも、1秒間に4万コマ(時間分解能が25マイクロ秒!)という世界最高速で撮影することに成功し、この長年にわたる疑問を解決した。細胞膜はすべての分子に対して直径30-200ナノメートルの微細なコンパートメント(細胞あたり約100万個) に仕切られており、リン脂質はコンパートメント間を飛び移る (ホップする) ことによって長距離の移動をおこなうこと(図1)、さらに、細胞膜直下にある膜骨格の網目(フェンス) に結合した多数の膜タンパク質が、ピケラインのように膜内に立ち並ぶため、液体の細胞膜中に仕切りができ、膜がコンパートメント化されることが突き止められた(図2:アンカード膜タンパク質ピケットモデル)。細胞膜は、この仕切りによる秩序と、分子の熱運動(ブラウン運動)のランダムさをうまくバランスさせて、受容体などの膜分子の集合、停留、拡散速度などを調節しているようである。

図1:

図2:

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