論文紹介

第1回論文紹介(2003.4更新)

グループ名
機能調節学 超分子システム学
著者
中田千枝子、K. Ritchie、中村光裕、大場裕一、堀田陽子、飯野亮太、笠井倫志、山口和彦、藤原敬宏、楠見明弘
タイトル(英)
Accumulation of anchored proteins forms membrane diffusion barriers as neurons develop polarization.
タイトル(日)
発生中の神経細胞が極性を獲得する過程で、膜骨格にアンカーされたタンパク質が集積して細胞膜に仕切りをつくる
発表された専門誌
Nat. Cell Biol.5(7):191-2.(2003) [PubMed]

神経細胞は、神経活動の入力を担う細胞体/樹状突起領域と、出力を担当する軸索部分に分かれている。当然、各領域の分子組成は異なっている。細胞膜は二次元の液体状であるのに、膜分子はどうして混ざり合わずにど ちらかの領域にとどまっていられるのか?ひとつの答えは、入出力の境界(イニシャルセグメント、IS)の細胞膜に膜分子の拡散を妨げる障壁が存在するというものである。しかしこの仮説の成否は明らかでなかった。 我々は1分子可視化・操作の技術を用いて膜分子(特に、細胞膜の脂質二重膜の主成分であるリン脂質)の挙動を1分子毎に調べた。その結果、ISにリン脂質分子に対しても機能する拡散障壁が存在すること、この障壁 は膜骨格とそれに結合した膜タンパク質が高密度に集まった結果としてできること、海馬細胞では生後10日頃に生成すること、を示した。

図1:

拡散障壁は存在する。神経細胞はイニシャルセグメントを境界にして二分される。神経細胞の細胞膜上でリン脂質の運動を1分子ごとに観察すると、IS膜上でリン脂質の運動が極めて抑制されていることがわかる。光ピンセットでリン脂質を引っ張ると、IS膜上では牽引できない。

図2:

軸索上の様々な場所でのリン脂質の軌跡(3.3秒間)。アンキリン(写真赤)やアクチン(写真白)といった膜骨格が密に存在する部位(ISに特に濃縮している)ほど、リン脂質の拡散運動が小さい。

図3:

IS膜上でリン脂質の運動が抑制される仕組み。膜骨格に結合して動かない膜タンパク質は、周囲に流体力学的摩擦効果を及ぼし、そこでの膜分子の運動を抑える。ニューロンの発達とともに、ISでは、膜骨格とそれに結合する膜タンパク質が高密度に集積し、膜分子はIS領域を通り抜けられなくなる。

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