研究室・教員

研究室紹介

形態統御学講座 Laboratory of Developmental Biology
生殖生物学グループ Group of Reproductive Biology

教授
田中 実性決定分化・生殖に関する現象解明
助教
菊地 真理子生殖細胞の性決定機構の解明
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English
田中 実教授
研究室のメンバー

生殖は生き物が子孫をつなぐために必須の現象です。そこには生き物にとって普遍的な現象があり、その変化によって生物ならではの、性決定分化の多様性や配偶子形成が開始するタイミングの問題、卵巣や精巣の大きさの違いなど、魅惑的かつ多彩な現象も生まれます。しかしそれら多くの仕組みはわかっておらず、そこには無限の荒野が広がっています。生殖生物学は分子生物学、発生学、細胞学、内分泌学などにまたがる複合分野です。これらのさまざまな手法を駆使してこの未知の荒野を開拓してみませんか?

性のコアメカニズム – 性決定分化・性転換の機構解明

多くの動物はメスかオスのどちらかに決まっているように見えます。その性はどのように決まるのでしょうか?

 研究室ではオスかメスに決まったように見えても、その性は一方の性に維持されていることをメダカを用いて明らかにしてきました。すなわち、「メスに決まったとしてもそれが破綻するとオスになり、オスの状態が破綻するとメスになる」、雌雄のどちらか一方には常になれる保障機構(性のコアメカニズム)が性の根底にあることが見えてきました。そこではシーソーが一方に傾くような機構によって性が決まり、性が維持されていると考えられます(図1)(図2)。
 このコアメカニズムを具体的に解くことにより、性決定分化の仕組みのみならず、環境による性決定の仕組みや、性転換の謎も解けるのではないかと考え研究を進めています。

性のコアメカニズムから広がる生殖現象の解明

コアメカニズムには生殖幹細胞の制御が密接に関わっていることもわかってきました。またこのコアメカニズムは卵巣や精巣の大きさや一個体がどれだけ卵や精子を産生し得るかの問題(器官サイズ・生殖能力の問題)、さらには思春期での精子形成開始の問題(第二次性徴発動の問題)、どのように多様な性決定システムが発展したかの問題(性決定進化の問題)とも関わることが見えてきています。これらはいずれも手がつけられていない問題で、性のコアメカニズムの発見によって多彩な生殖現象の理解が可能になるとして研究を行っています(図3)。

図1

性のコアメカニズム(メダカ)
メダカの性は遺伝的(XY/XX型)に決まり、通常は性転換することはない。しかしメス化(卵巣形成)に生殖細胞が適正数存在することが必要十分条件で、その数が少ないとY染色体がなくてもオスになってしまう。また過剰に存在するとY染色体があってもメスになってしまう。

図2

通常の性決定における性のコアメカニズム
通常の性決定分化では性決定遺伝子が存在する(XY)と、体細胞側のオス化能力が強まり、生殖細胞のもつメス化能力を抑制する。しかし性決定遺伝子が存在しない(XX)と生殖細胞のメス化能力が体細胞のもつオス化能力を凌駕すると考えられる。

図3

性決定には遺伝的に決まるもの(マウスXY型/ゼノパスZW型)や環境によって決まるもの(トカゲ)が存在する。また性転換する動物もいる(クマノミ)。どの程度の大きさの卵巣を持ち、どの程度の卵をつくるかも動物によって異なる(マンボウは最多の卵数)。これらの多様性は性のコアメカニズムの変化で生じてくる。

References

  1. Kikuchi et al, (2020) foxl3, a sexual switch in germ cells, initiates two independent molecular pathways for commitment to oogenesis in medaka. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2020) 117, 12174-12181.
  2. Sakae et al, (2020) Starvation causes female-to-male sex reversal through lipid metabolism in the teleost fish, medaka (Oryzias latipes). Biology Open (2020) 9, bio050054.
  3. Nishimura et al, Germ cells in the teleost fish medaka have an inherent feminizing effect. PLoS Genetics (2018) 14(3) e1007259
  4. Nishimura, et al., (2015) foxl3 is a germ cell-intrinsic factor involved in sperm-egg fate decision in medaka. Science 349, 328-331.
  5. Nishimura, et al., (2014) Analysis of a novel gene, Sdgc, reveals sex chromosome-dependent differences of medaka germ cells prior to gonad formation. Development 141, 3363-3369.
  6. Nakamura, et al., (2012) Hyperproliferation of mitotically active germ cells dues todefective anti-Müllerian hormone signaling mediates sex reversal in medaka. Development 139, 2283-2287.
  7. Nakamura, et al., (2010) Identification of germline stem cells in the ovary of the teleost medaka. Science 328, 1561-1563.
  8. Kurokawa, et al., (2007) Germ cells are essential for sexual dimorphism in the medaka gonad. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104, 16958-16963.
  9. Morinaga, C., et al., (2007) The hotei mutation of medaka in the anti-Mullerian hormone receptor causes the dysregulation of germ cell and sexual development. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104, 9691-9696.
  10. 田中実(一般書、2019年2月)「遺伝子から解き明かす性の不思議な世界」- 科学が明らかにした多様性と進化の仕組み 一色出版  ISBN 978-4-909383-06-8
  11. 田中実 雑誌「科学」2014年7月号, pp.764-768. 岩波書店 特集 「愛と性の科学」−「性が変わる能力」
  12. 諸橋憲一郎、田中実 (監修) 細胞工学 2013年2月号 秀潤社 特集号「性決定分化の制御システム」
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