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分子遺伝学講座進化遺伝グループ

現スタッフと研究テーマ
堀 寛(教授):メダカのゲノム解析によるHox クラスターの分子進化の解明
古賀章彦(助教授):メダカのトランスポゾン転位の分子機構
金森 章(助手):メダカの性分化関連遺伝子の解析

研究の概要
 動物は体色や模様 や形態をさまざまに変化させ、種の生き残り戦略に用いている。 この顕著な表現型の進化にも当然、遺伝的背景があり、その生物のゲノムの変化に由来している。我々の研究室では脊椎動物のゲノム進化を明らかにする目的で、メダカを材料に メダカHox クラスターの分子進化の解明、ゲノム再編にはたすトランスポゾンの役割、メダカの性分化関連遺伝子の解析を行っている。

1. メダカのゲノム解析によるHox クラスターの分子進化の解明
 Hox 遺伝子は多細胞動物の発生分化過程において形態形成の中心的役割を担う転写因子をコードしており、一連の遺伝子がクラスターを形成している。脊椎動物の中では、哺乳類では39個の遺伝子がA-D の4クラスターに別れて存在するが、硬骨魚類条鰭類のゼブラフィッシュやフグ、メダカではいづれも7クラスターが存在し、しかもゼブラフィッシュと後の二種ではその構成に大きな差のあることが、当研究室のメダカ Hox クラスター DNA の1400 Kb にわたる塩基配列決定によって明らかになった。さらにメダカだけに存在する HoxC3a* や HoxA7a が存在し、これらは特異な遺伝子構造をもち、特異な発現様式を示していた。これらメダカ特異的なHox がメダカの形態形成にどのように作用しているかを明らかにし、またHox クラスター全体が硬骨魚類条鰭類では哺乳類にくらべて倍化しているが、その進化機構を推察し進化的意義を明らかにする。

2. メダカのトランスポゾン転位の分子機構
 名古屋大学では古く1950 年代より脊椎動物の遺伝学と発生学のモデル動物としてメダカ(Oryzias latipes) が利用されてきた。なかでも富田により自然突然変異株として多数の体色変異メダカや形態異常変異メダカが分離され、その数は70種にのぼる。  体色変異メダカのなかでi4と呼ばれるアルビノ変異は黒色の色素メラニンの合成ができず、体色の白い変異株で、チロシナーゼ機能の欠損株である。そこでこの変異株のTyr遺伝子を解析したところ、Tyr遺伝子のエクソン5の内部に挿入配列が見つかり、これがアルビノを惹き起こすことが判明した。これはトウモロコシのAc 因子と同じファミリーに属する DNA 型トランスポゾンであり、Tol-2 と命名した。しかも切り出されたと思われる痕跡断片のDNA塩基配列が特異であることからTol-2に転位能力があることが確認された。これまで明らかになったTol-2の構造を図1に示す。

3. Tol-2による遺伝子改変系の開発
 Ac様トランスポゾンは「動く遺伝子」として最初にトウモロコシで発見され、シロイヌナズナなどの高等植物では遺伝子タギングに頻用されている転位因子である。Tol-2 はこのファミリーの因子であり、メダカで転位することから、これを利用して遺伝子改変系を開発すれば、脊椎動物でひろく利用できることが期待される。これまでに、メダカとゼブラフィッシュで、遺伝子導入ベクターの開発が完了した。より高度な応用法を開発中ある。さらにヒトやマウスで転位能力を持つことも確認されており、メダカで開発した系を応用する研究も始まった。

4. オスとメスの違いを作り出す仕組みをメダカで探る
 脊椎動物の未分化生殖巣がオスでの精巣、メスでの卵巣へ性分化する過程を、モデル動物メダカで解析する。その第一歩として性分化時に性特異的に発現する遺伝子の探索を行い、これまでにメス特異的に発現する遺伝子を数多く単離した。その大多数は生殖細胞で、卵形成(減数分裂)とともに発現を開始する遺伝子群であった。このうちfigaは、メダカの形態的性分化過程の最も初期に発現する遺伝子で、マウスでは卵形成のマスター遺伝子と考えられている。また、卵膜関連遺伝子(ZP遺伝子)の転写も制御している。現在この遺伝子を中心にメダカオス決定遺伝子dmyより開始する性分化をもたらす遺伝子カスケードの解析を行っている(図2)。

参考文献

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