今回のICARのテーマは、「2010 and Beyond」。2001年にシロイヌナズナの全ゲノム配列が解読された後に、Arabidopsis 2010 projectとして推進されたポストゲノム研究の総括と、今後の発展へ向けての方向性を示す内容となっていました。会議には、約1300人が参加し、そのうち約700人が国外からの参加者ということで、日本での開催にもかかわらず、国際色豊かな学会となりました。私はICARに初めて参加しましたが、他の参加者に話を聞くと、今回はシロイヌナズナ以外の植物を用いた研究発表が多いことに驚いていました。Plenary SessionのCrop Genomicsをはじめとして、分子育種やnatural variationに関する興味深い発表があり、シロイヌナズナ研究を基礎として、作物や樹木研究との連携を深める方向へと進んでいることが感じられました。また、タンパク質間相互作用、遺伝子発現ネットワーク、メタボロームなどの大規模な解析が盛んに行われており、生物システムの全体像を知ろうとする研究が推進されていることが印象的でした。
初日はDr. Maarten Koornneef (Max Planck Institute)とDr. Elliot M. Meyerowitz (California Institute of Technology)のKeynote Lectureからスタートしました。Dr. Koornneefは、シロイヌナズナのnatural variationを利用した種子休眠の分子機構に関する講演をされました。次のDr. Meyerowitzの講演は、茎頂メリステムの印象的なムービーから始まりました。PIN1-GFPを発現するシロイヌナズナ茎頂の経時的観察から、葉原基の形成場所の決定にオーキシンや物理的な刺激が関与することを話されました。観察方法を工夫し、植物の発生過程を時間経過とともに観察することは、新たな発見につながるのだということを印象づけられました。
2日目から最終日までは、午前中に2つのPlenary Sessionが行われました。全部で8つのテーマがあり、”Plant Hormone Regulation”, “Cell Biology”, “Environmental Responses”, “Epigenomics and RNA Regulation”, “Crop Genomics”, “Systems Biology and Metabolism”, “Evolution and Natural Variations”, “Development”と幅広い分野にわたっていました。本特定領域に関係する先生方も、オーガナイザー(荒木崇先生[班員]、関原明先生[班員]、塚谷裕一先生[班員]、岡田清孝先生[班員])またはスピーカー(角谷徹仁先生[班員]、松岡信先生[総括班]、田畑哲之先生[総括班]、鳥居啓子先生[班友])として壇上に上がられていました。 |