論文紹介

研究代表者

町田泰則

所 属 名古屋大学大学院理学研究科
著 者

Hiro Takahashi, Ayami Nakagawa, Shoko Kojima, Anna Takahashi, Byung-Yoon Cha, Je-Tae Woo, Kazuo Nagai, Yasunori Machida, Chiyoko Machida
(高橋広夫・中川彩美・小島晶子・高橋アンナ・車炳允・禹済泰・永井和夫・町田泰則・町田千代子)

論文題目

Discovery of novel rules for G-quadruplex-forming sequences in plants by using bioinformatics methods
(バイオインフォマティクス手法を用いた植物ゲノムにおけるG-quadruplex構造を形成しうる配列に関する新ルールの発見 )

発表誌

J. Biosci. Bioeng. 114(5), 570-575 (2012)

要 旨

  G-quadruplex (図1) は、ワトソン・クリック型とは異なるDNAの二次構造の一種であり、動物のゲノムでは、多くのがん遺伝子の上流に存在することから、抗がん剤のターゲットになる可能性が考えられ、そのゲノム上の分布や遺伝子発現における機能、及びそれに結合するやリガンドが精力的に研究されている。その結果、恒温動物では、G-quadruplexを形成しうる塩基配列がゲノム上の転写開始点付近に高度に集積されていることがわかってきた。また、リガンドとしてはベルベリンが同定され、抗がん剤の候補物質として報告されている。しかしながら、植物ゲノムにおけるG-quadruplexの分布については、これまでほとんど解析が行われてこなかった。
 本研究では、まず、G-quadruplexを形成しうる配列(G4MRと名付けた)と遺伝子のコード領域との位置関係を詳細に解析し分類するための新手法を開発した。さらに、本手法を、ヒト、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、線虫などのモデル生物に加え、シロイヌナズナ、葡萄、稲、ポプラの計8種類のゲノムに応用し、G4MRの解析を行った。その結果、ヒトでは、G4MRは、遺伝子の転写開始点の上流に、正鎖・相補鎖の区別無く集積しているのに対して、植物では遺伝子の転写開始点の上流相補鎖のみにG4MRが集積していることが明らかになった(図2)。さらに、植物では、葉緑体やヌクレオソーム(あるいはヒストン)と関連している遺伝子の近傍に、G4MRが集積している傾向が認められた。

図1.
図2.
研究室HP