論文紹介

研究代表者

福田裕穂

所 属 東京大学 大学院理学系研究科
著 者

Yoshihisa Oda, Hiroo Fukuda
(小田祥久、福田裕穂)

論文題目

Initiation of Cell Wall Pattern by a Rho- and Microtubule-Driven Symmetry Breaking
(Rhoと微小管がひき起こす対称性の破れによる細胞壁パターンの形成)

発表誌

Science 337,1333-1336, 2012

要 旨

  植物において細胞の形態や機能は細胞壁に大きく依存しているが,細胞壁のパ ターンをつくりだす分子機構はほとんど明らかになっていない。私たちは特徴的なパターンの細胞壁を沈着する木部道管をモデルとして細胞壁 のパターンをつくりだす分子機構を解析した。その結果,Rho型のsmall GTPaseの一つであるROP11が、ROPGEF4およびROPGAP3の働きにより局所的に活性化され、活性化されたROP11が微小管の脱重合を促進するタンパク質MIDD1と結合することにより、細胞壁合成のレールとなる表層微小管の脱重合を促進 していることが明らかになった(図1)。一方、表層微小管はMIDD1を介して活性型ROP11によってつくられた細胞膜ドメインの拡散を抑制していた(図2)。この表層 微小管と活性型ROP11との排他的な相互作用が木部道管における特徴的な細胞壁パターンをつくりだ していると考えられた。MIDD1は木部道管以外の細胞でも発現しており、同様の分子機構が他の細胞において も機能している可能性が考えられる。

図1.
図2.
研究室HP http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html