論文紹介

研究代表者

矢崎 一史

所 属 京都大学 生存圏研究所
著 者

Yoshihisa Kamimoto, Kazuyoshi Terasaka, Masafumi Hamamoto, Kojiro Takanashi, Shoju Fukuda, Nobukazu Shitan, Akifumi Sugiyama, Hideyuki Suzuki, Daisuke Shibata, Bangjun Wang, Stephan Pollmann, Markus Geisler, and Kazufumi Yazaki
(紙本 宜久、寺坂 和祥、濱本 正文、高梨 功次郎、福田 正充、士反 伸和、杉山 暁史、鈴木 秀幸、柴田 大輔、Bangjun Wang、Stephan Pollmann、Markus Geisler、矢崎 一史)

論文題目

Arabidopsis ABCB21 is a facultative auxin importer/exporter regulated by cytoplasmic auxin concentration
(ミシロイヌナズナのABC21は細胞質オーキシン濃度に制御される通性のオーキシン取込み/排出輸送体である)

発表誌

Plant Cell Physiology (in press)

要 旨

  植物ホルモンのオーキシンは、植物の生長発生過程において極めて重要である。ATP結合カセット(ABC)タンパク質の一グループであるP-糖タンパク質(PGPあるはABCBと略す)の仲間には、双子葉、単子葉植物の両方において、オーキシン輸送に関与するトランスポータがあることが知られる。今回我々は、新しいオーキシン輸送性ABCタンパク質、ABCB21の性質を解析した。ABCB型のトランスポータはシロイヌナズナで22種類あるが、ABCB21は、以前に我々が報告した根のオーキシン (IAA) 輸送体ABCB4に最も似ているが。しかし植物における発現組織は大きく異なっており、ABCB21は葉の裏側、茎葉や花弁の付け根など地上部でも発現が高かったが、根では特徴的に内梢細胞だけで発現していた。細胞内局在性は、細胞膜であった。
 このABCB4のIAA輸送方向に関しては、取込み型であるという報告と、排出型であるとの相反した論文が複数出ており、議論の的になっていた。今回この議論に決着を付けるべく、詳細な生化学的解析を行った。その結果、植物細胞においてABCB21はIAAを排出方向に輸送したが、酵母で発現させると逆にIAAを取込み方向に輸送した。またその輸送はオーキシン輸送阻害剤のNPAで抑制されることも分かった。さらに詳細に調べた所、このABCB21による輸送方向は、細胞質のIAA濃度が高いときには排出、細胞外のIAA濃度が高いときには取込み方向に機能するユニークな「通性」の輸送体であることが分かった。このような制御はABCトランスポータとしては初めてである。

図.
研究室HP http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/W/LPGE/