論文紹介

研究代表者

中島 敬二

所 属 奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科
著 者

Takamitsu Waki, Shunsuke Miyashima, Miyako Nakanishi, Yoichi Ikeda, Takashi Hashimoto and Keiji Nakajima
(和氣 貴光、宮島 俊介、中西 美耶子、池田 洋一、橋本 隆、中島 敬二)

論文題目

A GAL4-based targeted activation tagging system in Arabidopsis thaliana
(GAL4を用いたシロイヌナズナの標的型アクティベーションタギングシステム)

発表誌

"Plant J. 2012, in press Advance online publication DOI: 10.1111/tpj.12049

要 旨

  植物の形態や生理応答は、ゲノム上の約3万個の遺伝子の働きで決まります。研究者たちは興味ある形態や生理現象を司る遺伝子を見つけ、その作動原理を明らかにしようします。何らかの異常を持つ変異体を探し、原因遺伝子を突き止めるのが一般的な方法です。しかしこのようなアプローチにはいくつか問題があります。1つは植物の遺伝的な「頑強さ」です。重要な機能をもつ遺伝子は染色体の別々の場所に重複している場合が多く、それらが同時に変異した個体は極めて低い確率でしか得られません。逆に発生に必須の遺伝子がゲノム上に1つ(相同染色体に1つずつ)しか存在しない場合には、変異体そのものが得られなくなってしまいます。
この論文では、モデル植物のシロイヌナズナにおいて、形態形成に重要な遺伝子を効率よく見つける方法を報告しています。そのカギは、ゲノム上にある遺伝子の発現を根だけでランダムに活性化し、組織パターンが乱れた変異体を探すものです。このような方法はアクティベーションタギングと呼ばれ、以前から使われていますが、私たちの方法は根だけで活性化が起こるように工夫したものです。この方法で得られた変異体の異常は根に限定されるため、種を取って変異体を確立することができます。原因遺伝子の同定も比較的簡単です。私たちは、この方法で根や胚の発生に重要な遺伝子をいくつか見つけ出すことに成功しました

図1.
研究室HP http://bsw3.naist.jp/hashimoto/hashimoto.html