論文紹介

研究代表者

関 原明

所 属 理化学研究所 植物科学研究センター 
植物ゲノム発現研究チーム
著 者

Jong-Myong Kim, Taiko Kim To, Maho Tanaka, Takaho A. Endo, Akihiro Matsui, Junko Ishida, Fiona C. Robertson, Tetsuro Toyoda and Motoaki Seki
(金 鍾明、藤 泰子、田中 真帆、遠藤 高帆、松井 章浩、石田 順子、Fiona C. Robertson、豊田 哲郎、関 原明)

論文題目

Highly-reproducible ChIP-on-chip analysis to identify genome-wide protein binding and chromatin status in Arabidopsis thaliana.
(シロイヌナズナに特化した再現性の高いChIP-on-chip技術を用いたクロマチン状態のゲノムワイドな解析法)

発表誌

"In Methods in Molecular Biology; The ArabidopsisProtocols, 3rd edition. (Edited by Julio Salinas and Jose J. Sanchez-Serrano)". Humana Press. (2012) (in press).

要 旨

  真核生物の遺伝子活性はクロマチン動態を介して制御される。植物では、発生、開花、環境ストレス応答などの生物学的プロセスにおいて、エピジェネティックな因子として知られるヒストン修飾の変化などが、遺伝子の発現調節に関与することが報告されている。クロマチン免疫沈降法(ChIP法)とタイリングアレイを組み合わせたChIP-on-chip法、または高速シーケンサーを組み合わせたChIP-seq法は、クロマチンおよびエピジェネティック因子のゲノムワイドな動態を検出するパワフルな技術である。しかしながら、これら方法は研究室ごとの手法の違いによって実験結果が大きくばらつき、特に植物を対象とした再現性の高い実験結果を得るための安定した方法論はこれまで提供されていなかった。ここで紹介する方法論は、ChIP、ChIP-on-chip、およびChIP-seq法を用いて再現性の高い実験結果を得るために、著者らにより考案された方法論を、シロイヌナズナに特化して詳細に述べたものである。また本方法論は、植物のクロマチン動態および転写因子のゲノムワイドな結合解析など、ポストシーケンシング時代において植物の(エピ)ゲノム研究を進める上で、1つのスタンダードとなりうる方法論と考える。

図1.ChIP-on-chip(およびChIP-seq)解析手順の概要
研究室HP http://labs.psc.riken.jp/pgnrt/