植物は発生過程で不要なmRNAを分解する機構を複数もち、それらが複合的に作用して個体を形作る。その一角を担うデキャッピング複合体はmRNAのcap構造を除いて5'→3'方向へのmRNA分解を促し、遺伝子発現を抑制する。デキャッピング複合体構成タンパク質デキャッピング1
(DCP1)、デキャッピング2 (DCP2)、バリコース(VCS)の変異体は発芽直後から形態異常を示し茎頂分裂組織が観察できないことから、これらのタンパク質が初期発生に重要なことが示されている。直接mRNAを分解する経路とは別に、20-24塩基のmiRNAも相補的なmRNAに結合することで遺伝子発現を負に制御している。miRNAが発生に重要な転写因子を抑制していることからmiRNAも植物の発生に必須であると考えられている。
本研究ではデキャッピングタンパク質が多くのmiRNAの蓄積に関与することを明らかにした。 また、dcp1, dcp2, vcs変異体ではそのmiRNAの標的mRNAの蓄積が増加していた。miRNAが減少したために、標的の分解が弱まっている可能性が高い。これまでdcp1, dcp2, vcs変異体の表現型の原因は5'→3'方向へのmRNA分解の欠損であると考えられてきたが、それだけではなく、miRNAによる遺伝子抑制の低下により引き起こされている可能性が明らかとなった。
図1.シロイヌナズナのデキャッピングタンパク質変異体は実生致死表現型を示す
図2.デキャッピングタンパク質変異体ではmiR164の減少と共にその標的が増加する |