論文紹介

研究代表者

佐藤 忍

所 属 筑波大学 生命環境系
著 者

Furukawa J, Abe Y, Mizuno H, Matsuki K, Sagawa K, Mori H, Iwai H, Satoh S
(古川 純、阿部 雄太、水野 宏亮、松木 薫、佐川 啓子、森 仁志、岩井 宏暁、佐藤 忍)

論文題目

Abscisic acid-inducible 25 kDa xylem sap protein abundant in winter poplar
(冬季のポプラ導管液に多量に含まれるABA誘導性の25 kDaタンパク質)

発表誌

Plant Root; 5, 63-68 (2011)

要 旨

 環境要因によって制御される樹木の根の機能を明らかにする目的で、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)の導管液を2年間採取し、含まれているタンパク質を対象とした解析を行った。冬季の導管液に最も多く含まれていた25 kDaの分子量を持つタンパク質(Xylem Sap Protein 25 kDa;XSP25)について質量分析による同定を行ったところ、タバコBY-2培養細胞で報告されているアブシジン酸(ABA)誘導性のBasic Secretory Proteinと高い相同性を示した。ゲノム情報が明らかにされているポプラであるトリコカルパ(P. trichocarpa)の塩基配列を基にして、日本自生のポプラであるドロノキ(P. maximowiczii)の相同遺伝子PmXSP25をクローニングした。屋外環境で育成したドロノキの根を用いてPmXSP25の年間を通しての発現解析を行ったところ、冬季に高い発現を示しており、また秋季の根にABA処理を施すと顕著に発現が誘導された。以上から樹木の根組織において、休眠を誘導する短日環境や低温により、おそらくはABAを介して、XSP25の合成が促進され、冬季環境に備えている可能性が示された。

研究室HP http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~plphys/shinobuhomepage/SSindex.html