論文紹介

研究代表者

佐藤 忍

所 属 筑波大学 生命環境系
著 者

Furukawa J, Abe Y, Mizuno H, Matsuki K, Sagawa K, Kojima M, Sakakibara H, Iwai H, Satoh S
(古川 純、阿部 雄太、水野 宏亮、松木 薫、佐川 啓子、小嶋 美紀子、榊原 均、岩井 宏暁、佐藤 忍)

論文題目

Seasonal fluctuation of organic and inorganic components in xylem sap of Populus nigra
(セイヨウハコヤナギ導管液における無機・有機成分の季節変動)

発表誌

Plant Root; 5, 56-62 (2011)

要 旨

 落葉樹の地上部では成長や発達に年周期性を認めることができるが、そのような周期性を地下の根組織を対象として研究した例は少ない。我々は根における機能面での季節変動を明らかにするため、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)の導管液を2年間にわたって採取した。導管液に含まれる無機・有機成分の分析を行ったところ、カリウムやカルシウム、グルコースやタンパク質といった様々な導管液成分が、冬季から春季にかけて最大を示す季節変動をしていることが示された。また、アブシジン酸は年間を通してポプラの導管液中に最も高濃度に含まれている植物ホルモンであり、晩秋から春にかけて2度のピークを持つ濃度変化を示していた。糖やカルシウムの濃度を高めることで低温障害に対する耐性を獲得する例も報告されており、冬季環境への適応や春の開芽にむけた準備が低温により誘導され、根におけるタンパク質・糖の合成や導管液への金属輸送が促進されている可能性が示された。

研究室HP http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~plphys/shinobuhomepage/SSindex.html