TDIFは植物細胞間での情報伝達を担うペプチド分子で、特に維管束の発生過程において細胞の分化を制御します。TDIFを植物体に与えると、維管束形成の異常が起こることが分かっていましたが、今回私たちはTDIFがこの他に腋芽形成の促進効果を持つことを見出しました。TDIFペプチド群はシロイヌナズナゲノム中ではCLE41、CLE42、CLE44の3遺伝子にコードされており、このうちCLE42が茎頂および腋生メリステムで働くことが分かりました。TDIFペプチド群の植物体への効果を詳しく観察したところ、腋芽形成の開始時および成長時の両方において促進効果を持っていました。これに伴って、腋芽形成に関与するSTM遺伝子の発現上昇が見られました。これらの結果から、腋芽形成の促進というTDIFペプチド群の新しい働きが明らかとなりました。
図1.CLE42遺伝子の発現解析
CLE42プロモーターの活性(緑色の染色)が腋生メリステム周辺で見られる。
図2.TDIF ペプチド群による腋芽形成の促進
CLE42ペプチド処理(右)により、通常の生育条件(左)では見られないメリステム(m)と葉原基(lp)が葉腋に形成される。 |