アクチン繊維は植物細胞の様々な現象において重要な役割を果たしています。細胞分裂等の現象においてはアクチン繊維と微小管が協調して働くことが必要であるため、両者間には何らかの相互作用があると考えられています。私達は以前、苔類ゼニゴケにおいてアクチン繊維が独特の滑り運動を見せることを報告しています。今回は、この独特の動きと微小管との関係を調べることにしました。Lifeact-Venusによりアクチン繊維を可視化したゼニゴケに対し、paclitaxel(微小管安定化剤)処理、oryzalin(重合阻害剤)処理を行い、私達が開発した手法によりアクチン繊維の見かけの滑り速度を測定しました。驚くべきことに、いずれの処理においても見かけの滑り運動は加速し、その度合いはoryzalin処理よりもpaclitaxel処理の方がより顕著でした(図1)。また、免疫染色により、アクチン繊維と微小管が一部共局在していることを示しました(図2)。これらの結果より、ゼニゴケのアクチン繊維の運動に対し、微小管が何らかの抑制的な制御を行っていることが明らかとなりました。
図1.薬剤処理がアクチン繊維の見かけの運動速度(Movement index)に与える影響。各点はDMSO(Mock)、ミオシンATPase阻害剤(BDM)、微小管安定化剤(paclitaxel)、微小管重合阻害剤(oryzalin)処理をした際の各細胞における見かけの運動速度の平均値。n = 9~17
図2.微小管(a)とアクチン繊維(b)の二重免疫染色を行ったゼニゴケ葉状体の最大輝度投影像。(c)両者を重ねたもの。Scale bar = 5 mm。矢印は2つの微小管束をアクチン繊維が繋いでいる様子を示している。(d)(a)〜(c)の黄枠内を拡大したもの。アクチン繊維と微小管が沿うように存在している。Scale bar = 2 mm。 |