論文紹介

研究代表者

矢崎 一史

所 属 京都大学 生存圏研究所
著 者

Kojiro Takanashi, Hirokazu Takahashi, Nozomu Sakurai, Akifumi Sugiyama, Hideyuki Suzuki, Daisuke Shibata, Mikio Nakazono, Kazufumi Yazaki
(高梨 功次郎、高橋宏和、櫻井望、杉山暁史、鈴木秀幸、柴田大輔、中園幹生、矢崎一史)

論文題目

Tissue-specific transcriptome analysis in nodules of Lotus japonicus
(ミヤコグサ根粒における組織特異的トランスクリプトーム解析)

発表誌

Molecular Plant-Microbe Interactions (in press)

要 旨

 マメ 科植物は主に根粒において、根粒菌と共生窒素固定(SNFと略す)を行うが、根粒の中で は根粒菌に感染した植物細胞と非感染細胞とが共存している。マメ科植物の成熟根粒の内側では、植物細胞と共生バクテリアとの間で炭素栄養 と窒素栄養の活発な交換が行われている。このSNFに重要な代謝産物の動態を研究 するため、マメ科のモデル植物であるミヤコグサの根粒から、レーザーマイクロダイセクション技術により3つの異なった組織を切り出し、2万以上のミヤコグサ遺伝子が 乗ったオリゴアレイを使って網羅的な遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)を行った。我々の解析結果から、根粒内の3つの各組織特 異的に発現している多くの遺伝子が同定された。それらに関して、コードされる代謝酵素の機能によってクラス分けをした所、二次代謝系路に 関係する遺伝子が根粒の皮層細胞で非常に活性化していることが明らかとなった。特に、多くのフェニルプロパノイド系の遺伝子が、二次代謝 産物を輸送すると考えられる輸送体遺伝子とともに、高発現していることがわかった。これらのデータは、SNFの生理にフェニルプロパノイド が関与していることを示唆しており、興味深い。代表的な遺伝子についてはさらに、プロモータGUS実験による詳細な解析を行っ た。我々の結果は、根粒の発生や根粒内の組織特異的な生理機能を研究するための、新しい情報リソースを提供するものである。

図1.レーザーマイクロダイセクションによりミヤコグサ根粒組織を別々に切り出して、それぞれの組織においてどのような遺伝子が働いているかをマイクロアレイ解析により調べました。
図2.各組織で検出された遺伝子の数と、その中で代謝に関わる遺伝子の内訳。根粒の外側ほど二次代謝に関わる遺伝子が多く発現しており、二次代謝産物がバクテロイドを含む窒素固定領域を環境ストレスから守っていることが推測されました。
研究室HP http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/W/LPGE/