論文紹介

研究代表者

松下 智直

所 属 九州大学農学研究院
著 者 Tomonao Matsushita
(松下智直)
論文題目 A versatile method to prevent transcriptional gene silencing in Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナにおける転写抑制型遺伝子サイレンシングの簡便な抑制法)
発表誌

Plant Biotechnol. in press (2011)

要 旨   Transcriptional gene silencing(TGS)は、形質転換植物において複数の外来遺伝子がプロモーター領域間の相同性により不活性化される現象である。過剰発現体を親株としてT-DNAタギング法により人為的に変異を導入し、大規模な変異体スクリーニングを行う場合などには、TGSが致命的な問題となる。本研究にて私は、形質転換シロイヌナズナにおいて、簡便に、かつ完全に、TGSを抑える技術を報告する。シロイヌナズナ芽生えの光形態形成を指標としたアッセイ系を用いて、まず、過去の報告通り、導入する2つの外来遺伝子に対して異なるプロモーターを用いることでTGSが抑えられることを確認した。本研究ではさらに、2つの外来遺伝子の間で、ターミネーター配列や、T-DNA内の配列の相対的な向き変えることによっても、TGSが抑えられることを見出した。これらの技術を全て組み合わせることで、50,000個体以上のT1植物において完全にTGSが抑えられることを示した。本技術は、多重形質転換植物を作製する際のプラスミド構築において考慮すべき点を提供し、特に、SALKのT-DNA挿入系統において35Sプロモーターを用いて遺伝子を導入する場合などに有用であると考えられる。また本技術は、様々な植物種に応用可能であるため、基礎研究から応用研究まで、様々な場面で活用されることが期待される。
図1.用いたT-DNAコンストラクトとTGSの率
左側に示すそれぞれの組において、上のコンストラクトが親株において導入されているT-DNAの構成であり、下に示すのが2番目に導入されるタギング用のT-DNAである。上のT-DNAを持つ親株に、下のT-DNAを導入した時の、T1植物で観察されるTGSの率を、それぞれ右側に示す。括弧内に、TGSの観察された個体数と、T1植物の全個体数を示す。
研究室HP