論文紹介

研究代表者

佐藤 忍

所 属 筑波大学・生命環境科学研究科
著 者 Asahina M, Azuma K, Pitaksaringkarn W, Yamazaki T, Mitsuda N, Ohme-Takagi M, Yamaguchi S, Kamiya Y, Okada K, Nishimura T, Koshiba T, Yokota T, Kamada H, Satoh S.
(朝比奈 雅志、東 克也、ウィーラサック ピタクサリンカーン、山崎 貴司、光田 展隆、高木 優、山口 信次郎、岡田 清孝、西村 岳志、小柴 共一、横田 孝雄、鎌田 博、佐藤 忍)
論文題目 Spatially selective hormonal control of RAP2.6L and ANAC071 transcription factors involved in tissue reunion in Arabidopsis.
(シロイヌナズナの組織癒合に関与するRAP2.6L・ANAC071転写因子の植物ホルモンによる空間選択的制御)
発表誌

Proc. Natl. Acad. Sci. USA; 108 (38) 16128-16132 (2011)

要 旨   植物は環境応答の一つとして、傷害を受けた際に組織の再生o癒合を行うことが知られている。今回、我々は、シロイヌナズナの花茎を部分的に切断すると、主として髄組織の細胞が切断3日後から細胞分裂を開始し、約7日間で癒合すること、この癒合過程にはオーキシンの極性輸送が必須であることを示した。さらに、シロイヌナズナ切断花茎の癒合部における遺伝子発現を網羅的に解析し、癒合過程前半期では、転写因子・細胞分裂及び植物ホルモンの合成・情報伝達に関連する遺伝子が、癒合過程中〜後半期では、細胞壁の分解・合成に関連する遺伝子が特異的に発現上昇していることを明らかとした。また、これら遺伝子群の中から、それぞれNAC型転写因子ファミリーまたはERF/AP2型転写因子ファミリーに属する遺伝子に注目して解析を行った結果、傷の上部ではオーキシンがせき止められて溜ることによってANAC071が誘導され、一方、傷の下部ではオーキシンが枯渇することによってRAP2.6Lが誘導されることが明らかとなった。それぞれの遺伝子発現はエチレンとジャスモン酸によっても調節されることから、シロイヌナズナ切断花茎の組織癒合過程では、花茎切断によって生じた植物ホルモンのシグナリングが、これらの転写因子の発現を介して、細胞分裂・細胞壁代謝等の遺伝子発現を制御している可能性を示した。
研究室HP http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~plphys/shinobuhomepage/SSindex.html