論文紹介

研究代表者

島本 功

所 属

奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科

著 者

Ryo Ishikawa*, Mayumi Aoki*, Ken-ichi Kurotani, Shuji Yokoi, Tomoko Shinomura, Makoto Takano, Ko Shimamoto
(石川 亮*、青木 真由美*、黒谷 賢一、横井 修司、篠村 知子、高野 誠、島本功)

論文題目

Phytochrome B regulates Heading date 1 (Hd1)-mediated expression of rice florigen Hd3a and critical day length in rice
(フィトクロムBはHd1を介したイネフロリゲンHd3aの発現と限界日長応答を制御している)

発表誌

Mol. Gen. Genet. 285: 461-470 (2011)

要 旨  植物は日の長さの変化を葉で感じ取り、花成に最適な季節の到来を予期する。イネはわずか30分の日長変化を見分け、日長13時間から13.5時間に延長すると開花を約20日も遅らせる(図1A, C)。これは限界日長反応と呼ばれており、植物の日長計測の研究に古くから利用されてきたが、メカニズムは不明であった。
そこでフロリゲン遺伝子Hd3aの発現を詳細に調査した結果、限界日長反応時にHd3aの発現が急激に抑制されることが分かった(図1B)。さらにこれは赤色光受容体Phytochrome B (PhyB)を介することが分かった(図1D,E)。
 さらに、Hd3aの発現を制御する転写因子Hd1について、過剰発現とphyB変異を組み合わせた実験を行った。その結果、Hd1は本来Hd3aの発現を活性化するが、PhyBを介した光情報が入力されるとHd3aを抑制するように機能転換することが分かった。
 さらに詳細なHd1の発現解析を行い、イネ花成の日長応答は次のモデルでよく説明できることを示した(図2)。Hd1の発現は概日時計で制御され、その蓄積量は短日条件では暗期に、長日条件では一部明期にオーバーラップする。明期のHd1はPhyBによって抑制型に転換され、Hd3aの発現を抑えるため、長日条件で花成が遅延するのである。夜間の光照射で花成が遅延する現象(光中断)は、夜中に蓄積したHd1が光中断によって抑制型になるためであると考えられる。
図1 (A) 日長延長実験。(B-E) 野生型(B,C)及びphyB変異体(D,E)における日長時間を変えた時のHd3aの発現変化(B,D)及び花成時期の変化(C,E)。
図2 PhyBを介した光周性花成制御のモデル。

研究室HP http://bsw3.naist.jp/simamoto/simamoto.html