論文紹介

研究代表者

福田 裕穂

所 属

東京大学大学院理学系研究科

著 者

Ohashi-Ito, K., Oda, Y. and Fukuda, H.
(伊藤(大橋)恭子、小田祥久、福田裕穂)

論文題目

Arabidopsis VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN6 directly regulates the genes that govern programmed cell death and secondary wall formation during xylem differentiation.
(シロイヌナズナのVASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN6は木部分化において細胞死や二次壁形成に関わる遺伝子を直接制御する。)

発表誌

The Plant Cell, 22, 3461-3473, 2010.

要 旨  VASCULAR-RELATED NAC-DOMAIN6 (VND6) は維管束の木部にある道管細胞の形成を司るマスター遺伝子です。これまでVND6がどの遺伝子をどのように制御しているのかは明らかになっていませんでした。そこで私たちは、VND6が制御している下流の遺伝子群を調べるために、エストロジェン添加によりVND6を過剰発現できる培養細胞を材料としてマイクロアレイ解析を行いました。その結果、VND6は二次細胞壁形成に関わる遺伝子や細胞死に関わる遺伝子を含む多くの分化に関わる遺伝子を制御していることが分かりました。次に、詳細なプロモーター解析やゲルシフト解析等により、VND6がこれらの下流遺伝子をTEREというシス配列を通して直接制御していることを明らかにしました。この結果から、道管分化の細胞死の誘導機構は、転写を介するものであり、動物の細胞死の仕組みとは大きく異なっていることが明らかとなりました。
図 VND6タンパク質と、二次細胞壁形成や細胞死に関連する遺伝子のプロモーター領域に存在する様々なTERE配列を用いたゲルシフト解析。VND6転写因子は、二次壁成分の合成酵素をコードする遺伝子CESA4や細胞壁形成に関わる遺伝子PGだけでなく、細胞死に関連する遺伝子XCP1ATMC9ATSBT1.1のTERE配列に直接結合することで、その発現を制御している。

研究室HP http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html