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  • 論文紹介【第6回論文紹介】
  • 蘚類であるヒメツリガネゴケが32のメンバーを擁するエンド型キシログルカン転移酵素タンパク質ファミリーをもつことの生物学的な意味

論文紹介

研究代表者 西谷和彦 所 属 東北大学大学院生命科学研究科
著 者 Ryusuke Yokoyama, Yohei Uwagaki, Hiroki Sasaki, Taro Harada, Yuji Hiwatashi, Mitsuyasu Hasebe, Kazuhiko Nishitani
(横山隆亮、上垣陽平、佐々大樹、原田太郎、日渡祐二、長谷部光泰、西谷和彦)
論文題目 Biological implications of the occurrence of 32 members of XTH (xyloglucan endotransglucosylase/hydrolase) family of proteins in the bryophyte Physcomitrella patens
(蘚類であるヒメツリガネゴケが32のメンバーを擁するエンド型キシログルカン転移酵素タンパク質ファミリーをもつことの生物学的な意味 )
発表誌 The Plant Journal 64: 658-669 (2010)
要 旨   エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)は、キシログルカンの繋ぎ換えまたは分解反応を触媒する酵素である。多くの陸上植物の細胞壁は、キシログルカンが結晶性セルロース微繊維の間を架橋した基本構造を持つことから、XTHは細胞壁の構築・再編に重要な役割を担う酵素と考えられている。種子植物においては、多様化した組織の細胞壁構築・再編のために多数のXTH遺伝子が派生してきたことが明らかになっているが、種子植物とは全く異なる形質を持つコケ植物のXTH遺伝子についての知見は希有なものであった。本論文では、解読されたゲノム情報を用いて、コケ植物の一種であるヒメツリガネゴケのXTH遺伝子ファミリーの全容を明らかにしている。ヒメツリガネゴケにおいても、種子植物と同じ規模のXTH遺伝子ファミリーが存在し、各XTH遺伝子メンバーがそれぞれ特定の組織で機能していることが明らかになった。また驚くべきことに、コケのXTHの中には、種子植物のXTHでは報告のない構造を持つXTHが多数存在することも明らかになった。組換えタンパク質を利用した生化学的解析によって、コケ固有の構造を持つXTH は、キシログルカン分子を基質とする酵素などではなく、種子植物には存在しない全く新規の酵素であることが示された。
図1
図1 左から、PpXTH16, 21, 32の茎葉体における発現パターン

図2
図2 原糸体〜茎葉体におけるXTHの酵素活性
研究室HP http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/nishitani_lab/