論文紹介

研究代表者 佐藤忍 所 属 筑波大学生命環境科学研究科
著 者 Yuko Sato, Katsumi Yazawa, Seiji Yoshida, Masanori Tamaoki, Nobuyoshi Nakajima, Hiroaki Iwai, Tadashi Ishii, Shinobu Satoh
(佐藤祐子、矢澤克美、吉田征司、玉置雅紀、中嶋信美、岩井宏暁、石井忠、佐藤忍)
論文題目 Expression and functions of myo-inositol monophosphatase family genes in seed development of Arabidopsis
(シロイヌナズナの種子の発生におけるミオイノシトールモノホスファターゼファミリー遺伝子の発現と機能)
発表誌 J. Plant Res., in press, (2010)
要 旨   ミオイノシトールモノホスファターゼ(IMP)はミオイノシトール生合成の最終段階においてミオイノシトール3リン酸の脱リン酸化を触媒し、リン代謝や細胞壁多糖、フィチン酸、ホスファチジルイノシトールの生合成に必要である。 シロイヌナズナでは、IMPはVTC4 によってコードされるが、さらに2つのIMP候補遺伝子(IMPL1 , IMPL2 )については研究が進んでいなかった。そこで、これら3種のIMP遺伝子の発現を調べたところ、全てのIMP遺伝子は、栄養器官および生殖器官で同様の発現パターンを示した。また、発達中の種子では、これらのIMP遺伝子の発現は、ミオイノシトールの新規合成経路においてIMPに基質を供給するミオイノシトールリン酸合成酵素の遺伝子(MIPS )の発現とは相関していなかったが、 ミオイノシトールのサルベージ経路にかかわるミオイノシトールポリリン酸1ホスファターゼの遺伝子(SAL1)の発現と相関を示し、種子発達時にはIMPがホスファチジルイノシトールからのミオイノシトールの再生経路に関わっている事が考えられた。また、これら3種のIMP遺伝子の遺伝学的解析の結果、IMPL2の機能欠損変異体(impl2 )のみで球状胚の段階で胚性致死を示した。この形質はヒスチジン投与により部分的に回復した事から、IMPL2が胚発生過程でミオイノシトール合成に加えヒスチジン合成にもかかわる事が示された。
図1
図1 シロイヌナズナの種子発達時におけるミオイノシトールモノホスファターゼ遺伝子(VTC4, IMPL1, IMPL2)、ミオイノシトールポリリン酸1ホスファターゼ遺伝子(SAL1)、ミオイノシトールリン酸合成酵素遺伝子(MIPS1, MIPS2, MIPS3)の発現
 横軸のFBは花芽を、数字は鞘をサンプリングした開花後の日数を示す。
図1
図2 impl2変異体の種子における表現形質
 (A)は野生型の種子を、(B)はimpl2変異体のヘテロ接合体を自殖してできた種子を、(C)は変異体に野生型のIMPL2遺伝子を導入した植物の種子を示す。
研究室HP http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~plphys/shinobuhomepage/SSindex.html