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  • 論文紹介【第5回論文紹介】
  • 木部細胞の細胞壁構造は細胞膜に局在する新規微小管結合タンパク質による局所的な表層微小管の脱重合によって形成される

論文紹介

研究代表者 福田裕穂 所 属 東京大学大学院理学系研究科
著 者 Yoshihisa Oda, Yuki Iida, Yuki Kondo, Hiroo Fukuda
(小田祥久 飯田有希 近藤侑貴 福田裕穂)
論文題目

Wood cell-wall structure requires local 2D-microtubule disassembly by a novel plasma membrane-anchored microtubule-associated protein
(木部細胞の細胞壁構造は細胞膜に局在する新規微小管結合タンパク質による局所的な表層微小管の脱重合によって形成される)

発表誌 Current Biology, 20: 1197-1202, 2010
要 旨

表層微小管は、細胞膜中を移動するセルロース合成酵素複合体の軌道をコントロールすることによって、細胞壁の構造を制御しています。本論文では、二次細胞壁が局所的に肥厚する道管分化をモデルとし、表層微小管による細胞壁の制御機構を解析しました。私たちはまず、後生木部道管のマスター因子であるVND6をシロイヌナズナ培養細胞に導入することにより、in vitroの道管分化誘導系を新たに開発しました(図1A)。この分化誘導系では、わずか48 時間の間に80%もの細胞が後生木部道管へと分化します。分化過程において表層微小管は局所的に消失し、その領域が壁孔(二次細胞壁が肥厚しない領域)になることが分かりました(図1B)。次に、マイクロアレイデータを解析し、この現象に関わる新規の微小管結合タンパク質MIDD1(Microtubule depletion domain 1)を発見しました。MIDD1は細胞膜ドメインにアンカーされることによって、壁孔領域の表層微小管に特異的に結合し、表層微小管を局所的に分解していることが分かりました(図1C)。壁孔領域において、MIDD1は微小管のプラス端に顕著に蓄積し、微小管を崩壊へと向かわせます(図1D)。本研究により、木部細胞は、細胞膜ドメインを介し、表層微小管のダイナミクスを局所的に制御することで、特徴的な細胞壁構造を作り上げていることが明らかになりました(図1E)。

  

図1:後生木部道管分化におけるMIDD1による局所的な表層微小管の分解
(A)シロイヌナズナ培養細胞。分化誘導後は80%以上の細胞で二次細胞壁が形成される。二次細胞壁は蛍光色素(赤)で染色した。Bar = 50 mm。(B)微小管が局所的に消失し、壁孔が形成される。Bar = 10 mm。(C)MIDD1-GFP(緑)は壁孔の表層微小管に局在し、二次細胞壁(紫)直下の表層微小管には局在しない。画像は50枚の経時観察像を最大輝度投影したもの。Bar = 5 mm。(D)壁孔におけるMIDD1のダイナミクス。MIDD1-GFPによってラベルされた微小管のキモグラフを示す。微小管が脱重合を始めるとMIDD1が微小管のプラス端に蓄積する(やじり)。Bar = 2 mm。(E) 細胞膜ドメインによる表層微小管の制御モデル。MIDD1が細胞膜にアンカーされ(左)、細胞膜ドメインに侵入してきた表層微小管に結合し(中央)、微小管のプラス端に蓄積してレスキューを抑制する(右)と考えられる。

研究室HP

http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html