論文紹介

研究代表者 松林嘉克 所 属 名古屋大学大学院生命農学研究科
著 者 Ryota Komori, Yukari Amano, Mari Ogawa-Ohnishi, Yoshikatsu Matsubayashi
(小森領太,天野ゆかり,小川-大西真理,松林嘉克)
論文題目

Identification of tyrosylprotein sulfotransferase in Arabidopsis.
(シロイヌナズナにおけるチロシン硫酸化酵素の同定)

発表誌 Proc. Natl Acad. Sci. U S A. 106, 15067-15072 (2009)
要 旨  チロシン硫酸化は,真核生物において分泌経路で生産されるペプチドやタンパク質にしばしば見出される翻訳後修飾であり,植物では我々が同定したペプチドホルモンPSKおよびPSY1の2例が知られている.両者ともにチロシン硫酸化は生理活性に必須であることから,それに関与する酵素 tyrosylprotein sulfotransferase(TPST)の同定は,硫酸化ペプチドを研究する上で長年の課題であった.私たちは,PSY1の硫酸化部位周辺のペプチドをプローブとして,シロイヌナズナ細胞の膜画分からTPSTをアフィニティー精製し,その実体が62 kDのゴルジ膜局在型タンパク質であることを明らかにした.TPST遺伝子を破壊したシロイヌナズナ植物体では,全身的な矮小化,根端分裂組織における顕著な細胞分裂活性の低下,維管束の形成不全,early senescenceなどの表現型が観察された.興味深いことに,今回明らかとなった植物のTPSTと,既に明らかとなっていた動物のTPSTとの間には全く配列類似性がなく,それぞれが独立して収斂進化を遂げたことを意味している.(Kevin L. Moore博士によるコメント付き.PNAS 9月1日号の表紙の見出しとしても取り上げられた.)
図1
図1 (A)TPSTはゴルジ体に局在する.(B)TPST遺伝子を破壊したシロイヌナズナ植物体.
研究室HP http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~bioact/matsu/index.html