論文紹介

研究代表者 松林嘉克 所 属 名古屋大学大学院生命農学研究科
著 者 Kentaro Ohyama, Hidefumi Shinohara, Mari Ohnishi-Ogawa, Yoshikatsu Matsubayashi
(大山健太郎,篠原秀文,大西-小川真理,松林嘉克)
論文題目

A glycopeptide regulating stem cell fate in Arabidopsis.
(シロイヌナズナの茎頂メリステム幹細胞の運命を制御する糖ペプチド)

発表誌 Nature Chemical Biology 5, 578-580 (2009)
要 旨  茎頂分裂組織の重要な機能のひとつは,中心部の未分化な細胞群を一定数に維持したまま,周縁部の細胞を器官分化に向けて送り出し続けることにある.茎頂特異的に発現するCLAVATA3CLV3)は,未分化な細胞群が増えすぎないようにフィードバック抑制する機能を持つ分泌型ペプチド遺伝子として世界中で研究されてきたが,その遺伝子産物(成熟型ペプチド)の分子構造については様々な議論が続いていた.我々は,アポプラスト(細胞間隙)に存在するペプチドを精度良く解析するために開発した独自の系を用いて,植物体内に存在する成熟型CLV3の検出を試みた.その結果,成熟型CLV3ペプチドは,3つのアラビノースが付加した13アミノ酸グリコペプチドであることを見出した.アラビノース糖鎖修飾は,生物活性や受容体結合活性に非常に重要な役割を果たしていた.植物には,CLV3と構造の類似したペプチド遺伝子が多数存在しているが,今回の発見により細胞間情報伝達物質としてのグリコペプチドに注目が集まるものと思われる.
図1
図1 (A)CLV3成熟型ペプチドの構造.(B)精製したCLV3グリコペプチドをclv3-2変異株に投与すると,30 nMでほぼ完全に表現型を相補した.
研究室HP http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~bioact/matsu/index.html