論文紹介

研究代表者 柿本辰男 所 属 大阪大学大学院理学研究科
著 者 Kenta Hara, Toshiya Yokoo, Ryoko Kajita, Takaaki Onishi, Saiko Yahata, Kylee M. Peterson, Keiko U. Torii, Tatsuo Kakimoto
(原健太、横尾俊哉、梶田良子、大西毅明、八幡彩子、Kylee Peterson, 鳥居啓子、柿本辰男
論文題目

Epidermal Cell Density is Autoregulated via a Secretory Peptide, EPIDERMAL PATTERNING FACTOR 2 in Arabidopsis Leaves.
(シロイヌナズナの表皮細胞密度は、分泌性ペプチドEPF2によって自己調節されている)

発表誌 Plant Cell Physiol 50: 1019-1031, 2009
要 旨  多細胞生物では、組織の細胞の数は厳密に制御されています。私達は植物の表皮細胞の密度を自己調節する細胞間シグナル分子を見つけました。成熟した葉の表皮は、気孔を構成する孔辺細胞と、一般の表皮細胞(ペーブメント細胞)から構成されます。葉の表皮の発生について説明しましょう。葉の原基において原表皮細胞の一部がメリステモイド母細胞(MMC)になります。MMCは不等分裂をして、小さい方は三角形の細胞がメリステモイドとなります。大きい方(姉妹細胞)は再び不等分裂するか、あるいはペーブメント細胞になります。つまり、MMCに選ばれる細胞の数と、姉妹細胞の不等分裂の回数が表皮の密度の決定因子となるわけです。私達が見つけた分泌ペプチド(EPF2)は、MMC、メリステモイド、姉妹細胞で作られ、遅れて作られようとするMMCの形成を阻害します。EPF2は表皮細胞形成の負のフィードバック因子となり、表皮細胞の密度を決定しているのです。EPF2とEPF1は作用にTMM/ER/RRL1/ERL2受容体を必要としますが、受容体には別のシグナルとして認識されていることもわかりました。
図1
図1 表皮細胞密度調節のフィードバックモデル。
EPF2は気孔系列の初期の細胞で作られ、分泌される。EPF2は細胞非自律的に働き、原表皮細胞(ここでは、スペースの関係で、気孔系列に由来した細胞に向けて抑制の線を書いているが、後から運命決定する原表皮細胞に働く)がメリステモイド母細胞になることを阻害する。
研究室HP http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/dbs01/re-paper-temp.php?id=2