論文紹介

研究代表者 梅田正明 所 属 奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科
著 者 Sumiko Adachi, Takashi Nobusawa and Masaaki Umeda
(安達澄子、信澤岳、梅田正明)
論文題目 Quantitative and cell type-specific transcriptional regulation of A-type cyclin-dependent kinase in Arabidopsis thaliana
( シロイヌナズナA型サイクリン依存性キナーゼの転写における量的・細胞型特異的な制御)
発表誌 Developmental Biology 329, 306-314
要 旨  シロイヌナズナの細胞分裂を主として制御するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)のうち、A型CDK (CDKA)は酵母から高等生物まで広く保存されており、シロイヌナズナの細胞分裂においても不可欠であることが明らかになっている。植物は動物とは異なり、光や栄養といった環境からのシグナルに応じて生涯にわたり次々に葉や根を作り続ける。つまり、細胞分裂に不可欠なCDKA遺伝子がいつ・どこで発現するかを解析することにより、植物の発生(内的な因子)や環境(外的な因子)から細胞分裂制御因子までのシグナル伝達が明らかになると考えられる。今回我々は、器官発生におけるCDKA遺伝子の発現制御に注目した。様々なプロモーター配列の断片を用いる事により、CDKA遺伝子の発現は2通りの制御を受けていることが明らかになった(図1)。すなわち、組織によらず発現量を増加させる制御、および細胞層によって発現量を変化させる制御である。後者については、若い葉の表皮とその内側で発現制御が異なることが示唆され、今回見出したCDKA遺伝子の転写制御が葉の発生において重要な役割を果たしていると考えられる。
図1
図1 CDKA遺伝子のプロモーターに存在する転写制御領域
青線は、今回明らかになった転写制御領域を示している。CDKA遺伝子の模式図では、白色と黒色の長方形がそれぞれUTRとエキソンを示している。植物組織の模式図では、転写制御領域が転写を活性化する細胞層と組織を青色で示した。-890〜-601 bpの領域は若い葉の表皮で、-200〜-100 bpの領域は分裂組織の全体と葉の表皮より内側で転写を活性化する。
研究室HP http://bsw3.naist.jp/umeda/index.html