論文紹介

研究代表者 角谷徹仁 所 属 国立遺伝学研究所
著 者 Asuka Miura, Miyuki Nakamura, Soichi Inagaki, Akie Kobayashi, Hidetoshi Saze, and Tetsuji Kakutani.
(三浦明日香、中村みゆき、稲垣宗一、小林啓恵、佐瀬英俊、角谷徹仁)
論文題目 An Arabidopsis jmjC-domain protein protects transcribed genes from DNA methylation at CHG sites.
(シロイヌナズナのjmjCドメイン蛋白質が、転写されている遺伝子のCHGサイトのメチル化を防ぐ)
発表誌 EMBO J. 28, 1078-1086
要 旨  脊椎動物や植物のゲノムDNAではシトシンの一部がメチル化されています。このメチル化は、ゲノムの不安定化要因であるトランスポゾン配列を抑制する際の目印となっています。一方で、通常の遺伝子が働くには、メチル化されずにとどまる必要があります。私達は、シロイヌナズナの「十文字」ドメイン蛋白質であるIBM1(increase in BONSAI methylation 1) が遺伝子のメチル化を防ぐのに必要であること、また、このIBM1の働きが正常なシロイヌナズナの発生に必要であることを示していました。今回、IBM1遺伝子の突然変異体におけるDNAメチル化を全ゲノムで調べた結果、この突然変異体では少なくとも数千の遺伝子のメチル化が上昇していることがわかりました。トランスポゾンは影響されませんでした。遺伝子の中でも、転写されていて、かつ長い遺伝子が特に大きい影響を受けていました。IBM1蛋白質は転写されている遺伝子のメチル化を防ぐことで、遺伝子とトランスポゾンとの区別に貢献しているようです。
図1
図1 転写単位ごとのDNAメチル化をibm1突然変異体と野生型とで比べたもの。
数千の遺伝子がibm1突然変異によるメチル化上昇を示す(右のパネル)。
一方、トランスポゾンのほとんどは影響されない(左のパネル)
研究室HP http://www.nig.ac.jp/labs/AgrGen/home-j.html