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  • 論文紹介【第2回論文紹介】
  • イネのCAF-1 p150 サブユニットをコードするFLATTENED SHOOT MERISTEM遺伝子は細胞周期の長さを制御しメリステムの維持に必要である

論文紹介

研究代表者 伊藤純一 所 属 東京大学大学院農学生命科学研究科
著 者 Masashi Abe, Hideaki Kuroshita, Masaaki Umeda, Jun-Ichi Itoh, Yasuo Nagato
(阿部匡、黒下英昭、梅田正明、伊藤純一、長戸康郎)
論文題目 The rice FLATTENED SHOOT MERISTEM, encoding CAF-1 p150 subunit, is required for meristem maintenance by regulating the cell-cycle period.
(イネのCAF-1 p150 サブユニットをコードするFLATTENED SHOOT MERISTEM遺伝子は細胞周期の長さを制御しメリステムの維持に必要である。)
発表誌 Developmental Biology 319:384-393(2008)
要 旨  イネにおけるSAMの維持に関わる遺伝子を同定することを目的として、SAMが成長の初期に消失してしまう変異体であるflattened shoot meristem (fsm)変異体の解析を行なった。fsmでは栄養成長の初期にSAMが扁平となり多くの個体がその後枯死する。この原因遺伝子を単離したところ、FSMはクロマチン形成に関わるchromatin assembly factor-1の最大サブユニットをコードしていた。この遺伝子は既にシロイヌナズナにおいて報告のあったFASCIATA1 (FAS1)遺伝子のオルソログであったが、fsmではSAMが消失するのに対して、fas1ではSAMが肥大するという逆の表現型を示す。そこで、fsmにおけるSAMの消失の原因を明らかにするために、SAMにおける細胞分裂を、細胞周期関連遺伝子の発現を観察することによって解析した。SAMにおけるマーカー遺伝子の発現細胞数はfsm変異体では有意に増加しており、細胞分裂の活性が上昇しているように思えた。しかし実際はfsmにおけるSAMの細胞数は野生型より少なく、また徐々に減少していくことから、細胞周期関連遺伝子の発現上昇は細胞分裂の上昇ではなく、細胞周期の進行の延滞によるものであると考えられた。これらのことから、SAMの構造維持にはエピジェネテックな細胞分裂の制御が重要であり、イネとシロイヌナズナではその関与様式もしくは感受性が異なると考えられる。
図1図1 播種後1週間目の芽生えにおける茎頂分裂組織(SAM)の構造
A. 野生型、B. fsm変異体。SAM(矢頭)がfsm変異体では扁平で小さくなっている。
図2図2 二重蛍光in situ法による細胞分裂周期マーカー遺伝子の発現
緑:S期に発現するhistone H4遺伝子の発現。赤:G2/M期に発現するcdc2Os3遺伝子の発現。A, C, E、野生型。B, D, F、fsm変異体。SAM(白丸)周辺におけるマーカー遺伝子の発現する細胞数がfsm変異体では増加している。E, FはそれぞれAC、BDを重ね合わせたもの。野生型、fsmともに両者のマーカー遺伝子の発現は重ならない。
研究室HP