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  • 論文紹介【第2回論文紹介】
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論文紹介

研究代表者 山篠貴史 所 属 名古屋大学大学院生命農学研究科
著 者 Ishida, K., Yamashino, T., Yokoyama, A., and Mizuno, T.
(石田快、山篠貴史、横山明弘、水野猛)
論文題目 Three type-B response regulators, ARR1, ARR10 and ARR12, play essential but redundant roles in cytokinin signal transduction throughout the life cycle of Arabidopsis thaliana.
発表誌 Plant & Cell Physiology 49, 47-57 (2008).
要 旨  サイトカイニン(CK)は、細胞分裂、分化、シュートの形成など、植物の成長・分化の様々な場面に関わる重要な植物ホルモンである。シロイヌナズナにおけるCK情報伝達初発分子機構は、AHK(CK受容体)→ AHP → Type-B ARR(転写因子)からなるリン酸リレー系により制御されている。シロイヌナズナにはType-B ARRが11種存在し、そのうち7種がCK情報伝達に深く関与していることが知られている。しかし、それらの機能重複や機能分担に関しては不明な点が多い。今回我々は、これら7種類のType-B ARRに関してそれぞれT-DNA挿入変異体を確立した。次いで、多重欠損変異体を作製してCK情報伝達におけるType-B ARRの機能に関する遺伝学的な解析を行った。
 その結果、arr1-4 arr10-5 arr12-1三重欠損変異体は生育全般にわたり重篤な表現型を示すことが明らかになった。根の伸長阻害、カルスからのシュート分化、CK応答性遺伝子発現等においてCK非感受性を示した。また、種子の肥大、主根形成不全と不定根の形成、根の維管束分化の異常、茎頂・根端分裂組織領域の減少が観察された。これらの表現型はCK受容体(AHK)三重欠損変異体(ahk2/3/4)に極めて類似していた。以上の結果より、7種類のType-B ARRの中で、ARR1、ARR10、ARR12がCK初期情報伝達経路において必須の役割を担っていることが示唆された。
図1図1 野生株とarr1/arr10/arr12三重変異体における茎頂分裂組織の比較
arr1/arr10/arr12三重変異体は野生株と比較して茎頂分裂組織を構成する細胞数が顕著に減少していることが観察された。この結果は、His-Aspリン酸リレー系を介したサイトカイニン情報伝達において、B型レスポンスレギュレーターをコードするARR1, ARR10, ARR12が正常なメリステムの機能発現に必須の遺伝子であることを示唆している。
図2
図2 His-Aspリン酸リレーを介したサイトカイニン情報伝達における初発の分子機構 シロイヌナズナのセンサーヒスチジンキナーゼAHK2/3/4はサイトカイニンの受容体として機能することが知られている。また、サイトカイニン情報はAHK→AHP(リン酸リレーのメディエーター)→ARR(転写因子ドメインをもつレスポンスレギュレーター)へのリン酸リレーを介して核における遺伝子発現の調節に結びつくと考えられている。そこで、我々は遺伝学的な手法を用いてAHPおよびARR遺伝子の機能解析を行い、AHPが細胞質から核へのリン酸リレーを仲介する役割を果たすこと、 ARR1/ARR10/ARR12がサイトカイニン情報伝達に関わる必須のレスポンスレギュレーター分子として機能していることを示した。その結果、AHK2/3/4→AHP→ARR1/10/12を基本骨格とするリン酸リレー系がサイトカイニン情報伝達の初発の分子機構の実体であることが明らかとなった。
研究室HP http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~microbio/