論文紹介

研究代表者 澤 進一郎 所 属 東京大学大学院理学系研究科
著 者 Jun Sakaguchi, Jun-Ichi Itoh, Yukihiro Ito, Ayako Nakamura, Hiroo Fukuda and Shinichiro Sawa
(坂口 潤、伊藤 純一、伊藤 幸博、中村 郁子、福田 裕穂、澤 進一郎)
論文題目

COE1, an LRR-RLK responsible for commissural vein pattern formation in rice
(LRR-RLKをコードするイネのCOE1遺伝子は横走維管束の間隔制御に寄与している。)

発表誌 Plant Journal, 2010, in press
要 旨

 高等植物の体全体に連続した形で分布する維管束組織は水や無機塩を運ぶ木部と光合成産物などを運ぶ篩部からなる複合的な通道組織である。特に葉での維管束パターン、つまり葉脈パターンの形成は、葉での効率的な物質輸送を実現するために高度に調節されている。
  これまでにも、双子葉植物のモデル植物であるシロイヌナズナを用いた葉脈パターン形成の研究で幾つかの知見が得られてきた。一方、単子葉植物のモデル植物であるイネは平行脈と連絡脈からなる「あみだくじ」状の単純な葉脈パターンを示す上、連絡脈は道管・篩管・二つの伴細胞という極めて単純な維管束組織であり、よいモデル系となる。我々はイネの連絡脈の形成を葉脈パターンの形成におけるモデルと位置づけ研究を進めている。
  我々が単離したcommissural vein excessive1 (coe1)は連絡脈の形成間隔が狭くなり、その一部が束状になる表現型を示す。この原因遺伝子は受容体型キナーゼの一種であるLRR-RLKをコードすることを突き止めた。この結果は連絡脈の形成開始位置の決定には細胞間シグナルを介した側方抑制的な制御機構が存在することを示唆する。またCOE1を介した連絡脈の形成制御はオーキシンやブラシノステロイドシグナルの下流で機能することが示唆され、COE1はこれらのシグナルを統合して連絡脈形成を制御していると考えている。

  

図1:
(上:野生型)イネの葉脈は大小ある平行脈とそれらを結ぶ連絡脈からなるあみだくじ状のパターンを形成する。
(下:coe1変異体)これに対しcoe1変異体は連絡脈の形成間隔が狭くなる(黄色矢印)ことに加え、一部が束化する(赤円)。

研究室HP

http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seigyo/lab.html