論文紹介

研究代表者 塚谷 裕一 所 属 東京大学大学院理学系研究科及び
基礎生物学研究所
著 者 Ushio Fujikura, Gorou Horiguchi, Maria Rosa Ponce, Jose Luis Micol, Hirokazu Tsukaya
(藤倉潮、堀口吾朗、マリア・ロサ・ポンセ、ホセ・ルイス・ミコル、塚谷裕一)
論文題目

Coordination of cell proliferation and cell expansion mediated by ribosome-related processes in the leaves of Arabidopsis thaliana
(シロイヌナズナの葉における細胞増殖と細胞伸長の統合は、リボゾーム関連の遺伝系を介している)

発表誌 The Plant Journal 59: 499-508 (2009)
要 旨  葉においては、細胞増殖と細胞伸長は何らかの未知の仕組みで統合されていると考えられます。それは、細胞数の著しい現象が起きた場合、それを補うかのように細胞が異常肥大する現象、補償作用が見られるからです。そのシステムの解明のため、私たちはシロイヌナズナを実験材料として使い、細胞の大きさは変化ないまま、細胞の数が減少しているoli変異体群を単離し、遺伝学的な解析を進めました。その結果、oli変異体のいくつかは、リボゾームを構成しているタンパク質の機能が失われた突然変異株であることが見出されました。さらに面白い事に、細胞の数のみが減少したoli変異株どうしを掛け合わせて、さらに細胞が減少した二重変異株を作製すると、葉に含まれる細胞の数がより大きく減少すると共に、細胞一つ一つが大型化することを発見しました(図)。これはまさに補償作用です。今回の発見は、ある限度を超えて細胞数が減少したときに限って、細胞が通常より大きくなること、つまり補償作用が誘導されるということを示しています。すなわち、補償作用の発露には、ある閾値を超えた細胞増殖の欠損が必要だということになります。またリボゾームの構成因子が器官サイズの制御にも関わっているということも、予期せぬ発見でした。


研究室HP http://www.nibb.ac.jp/%7Ebioenv2/indexj.html
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/bionev2/top_j.html