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〈分布・地理的変異〉奄美諸島以南の南西諸島に広く分布するが,どの島でもみられるというものではなく,八重山諸島(波照間島・与那国島・西表島・黒島・小浜島・竹富島・石垣島),宮古諸島(多良間島・来間島・下地島・伊良部島・宮古島),沖縄諸島(沖縄本島・久米島・久高島・与勝諸島・阿嘉島・座間味島・渡嘉敷島・渡名喜島・伊江島・伊是名島・伊平屋島),南大東島,北大東島,奄美諸島(与論島・沖永良部島・徳之島・奄美大島・喜界島)から記録されるが,島によって個体群密度が異なる。トカラ列島以北の記録としては,1939年(仙台市),1972年(東京都),1972年7月17日(長崎県福江市,♀)という例外的記録を除くと,鹿児島県下に限られ,1951(口永良部島),1959年(坊津町),1963年(枕崎市),1964年(宝島),1965年(佐多町,屋久島),1966年(山川町,屋久島),1967年には口之島,口永良部島,種子島,佐多町,開聞町,日吉町と急増した。その後,1969,1970,1974,1976,1978-1980年には記録がない。トカラ列島から九州南端部にかけて本種の分布記録がふえてきたことは,分布が拡がってきたことを示しているようにも思われる。その中には,発生したと思われるような記録もあるが,幼虫などの確認はない。国内では地理的変異は知られていないが,♀には遺伝的二型があり,♂と似た白帯型(第1型)と赤斑型(第II型)で,赤斑型を支配する遺伝子は白帯型の遺伝子に対して優性で,♀のみに現われる限性遺伝子である。
<周年経過〉南西諸島で,年発生回数が調査されたことはないが,奄美諸島で2-3月,4-5月,6-7月,7-8月,9月,10-11月の年6回ぐらいと推定される。しかし,蠕の休眠性や世代の重なりなどかなり複雑な経過をたどるものと考えられる。奄美諸島や沖縄諸島では,冬期に成虫がみられない時期もあり,蝋越冬と推定される。飼育すると,嫡が夏にも1か月後に羽化したり,秋に蠕になるものが冬に羽化したりする。沖縄本島では第1回めの成虫は2月からみられるが,本格的羽化は3月上旬ごろで,以後11月まで連続的に見られ,12月には少なくなる。八重山諸島では,1月から12月までみられるというのみで詳細不明。
〈生息地〉平地から中山地に広く生息するが,海岸地帯のサルカケミカンの群落付近の中山地の林縁から人家周辺のミカン類の見られるところに多い。しばしぱ何もない畑地や荒れ地をよこぎる個体をみる。
〈食餌植物〉野生のミカン科のサルカケミカン,栽培のヒラミレモン(シークワサー)を主とするミカン類を広く利用しているが,記録のあるヒレザンショウやアワダンが食樹となるかどうか,再調査を要する。飼育のときは,サンショウ,カラタチや栽培ミカン類のキンカン,ボンタン,ナツミカン,ダイダイを食べる。シロオビアゲハの島ごとの個体数の差や分布の有無は食草とくにサルカケミカンと関係があるのかもしれないので,島ごとの食樹をさらにくわしく調べる必要がある。
〈成虫〉飛び方はあまり活発なほうではなく,ときには流れるように飛び,地表近くの高さから2mぐらいの高さまで飛ぶことが多い。赤い花に吸蜜に来ることが多く,とくにハイピスカス(ブッソウゲ)との結びつきは強いが,その他多くの花を訪れる。吸蜜植物は,カンナ,アオイ,バラ,サルビア,ランタナ,ヒラミレモン,ヤブガラシ,タチアワユキセンダングサ,ウコンイソマツ,ク.サギ,サンダンカ,トレニア,アサガオ(赤),ヨウサイ,ムラサキカタバミ,テリハノブドウ,クミスクチン,センネンボク,ナンキンハゼ,カクトラノオ,ケイトウ,ヒギリ,モンパノキ,ゲットウ,ヒャクニチソウ,センニチソウ,ダリア,ヒマワリ,ヘチマ,キョウチクトウ,ホウセンカ,ムクゲ,グンバイヒルガオ,パパイア,ムラサキカッコアザミ,リュウキュウアザミ,ナガボソウ,コセンダングサ,ブーゲンビリアの記録がある。吸蜜時刻は早朝からはじまり10-16時が多い。♂は路上の湿地で吸水することがある。樹林内で蝶道らしいものがあるが,はっきりしない。喜界島での観察(田中,1962)によると,夏の活動は,午前7時にはすでに吸蜜をはじめており,午前10時-午後4時に個体数は多く,午後7時すぎの日没後に飛ぶ個体もみられる。しかし,午後6時にすでに静止場所をさがすような行動みられ,午後6時30分には翅を水平に開いて頭を上向きに,前翅を後にさげて静止している1♀や花壇の地上50cmの草で同様の姿勢で静止する個体が観察された。夜間,灯火に飛んでくる個体もある。また,午後1ごろ,池の水に着水して飛び去る2♂を観察したが,これがいわゆる水浴であったかどうかは明らかでない。
配偶行動の記録はないが,交尾飛翔型式は←♀+♂。産卵は10時-11時ごろに多く見られ,サルカケミカンや栽培ミカンの新芽に翅をふるわせながら1個ずつ産付する。野外で,アゲハ♀と交尾している♂が記録されている(沖縄本島,1980年6月29日)。また,ハイビスカスの花上でカマキリの一種に食べられている♂の記録がある。今後の問題としては,1968から宮古・八重山諸島で個体数を増し,分布を拡げたベニモンアゲハとの擬態関係、それにともなうシロオビアゲハ♀の型とその出現頻度の変化の有無などがある。
〈卵〉ミカン類の若葉の裏や新芽に1個ずつ産付されることが多く、色は黄色で孵化が近づくと褐色となる。卵期は6月で5日、7-9月で4日、10月で5-6日。
〈幼虫〉孵化幼虫は,卵殻を食べたのち若葉の表に座をきめ,葉縁から食べる。その後も葉表に静止し,その葉の葉縁から食べる。幼虫の齢数は5齢。幼虫の期間は6月で18-23日。習性は今のところ他のアゲハ属ととくに異なった点は見られない。
〈蛹〉食樹の小枝で発見されることが多く,人家の窓わくで褐色型の越冬蛹が発見されたこともある。蛹には緑色と褐色型の2型がある。夏には早期に羽化するらしい。蛹期は、5に15日,6月10日,9月に10日,10月に15日などの例がふつうであるが・6月18日蛹化したものが7月21日羽化(♂)という記録もある。
〈参考文献〉
1.田中洋(1962)喜界島8月の蝶類(1961年),LEBEN(4):1-13.
2.田中洋・大原賢二(1972)沖縄島の蝶類観察記(1970年),SATSUMA20(61):134-140.
3.長嶺邦雄(1981)1980年の訪花蝶の記録,琉球の昆虫(5):41-46.