当研究室は、名古屋大学高等研究院研究者育成特別プログラム(テニュア・トラック制度)」により開設されました。
発生に関わる細胞間、細胞内情報伝達の仕組み
ある細胞が分化して特定の細胞に運命決定されるためには、周りの細胞との間でやり取りする情報が大事であることが分かってきました。私たちは、そのような細胞間での情報伝達経路のひとつである、Notchシグナルと呼ばれる情報伝達経路について研究しています。Notch蛋白質は受容体であり、隣の細胞にあるリガンドに結合することで、情報は細胞内へと伝えられます。一方、Notchシグナル伝達経路は個体発生の際に、異なった組織で繰り返し働くことが知られています。従って、神経、体節、血液細胞などの異なった組織では、Notchシグナルが異なった働きや制御を受けていることになります。このような、それぞれのコンテキストに依存したシグナルの調節機構や標的遺伝子の活性化機構は未だ不明の点が多く残されています。これらを明らかにするため、Notch受容体がリガンドの情報を受け取る仕組み、細胞内への情報がどのような遺伝子の活性化につながるのかなどについて、ゼブラフィッシュや培養細胞を使って研究をしています。
ゼブラフィッシュを使ってイメージング
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(図1)Mib変異体の神経異常
Mib変異体(右)では野生型(左)と比較して神経細胞の数が増加している。 |
私たちは一個の卵が受精後、どのような経緯を経て最終的に特化した器官が形成されるのかについて、興味を持っています。私たちはその脊椎動物に共通の機能を探る目的でゼブラフィッシュという、熱帯魚をモデル動物に用いています。ゼブラフィッシュには現在多くの研究で使われているマウスやラットといった哺乳類にはない利点があります。それは、卵を多く産むこと(一匹のメスで約百個)、胚の発生が体外で進行すること、胚が透明であることなどで顕微鏡下での発生過程の観察が容易である点です。このような利点を遺伝子操作技術と組み合わせることで細胞を生きたまま個体の中で観察することが可能になります。このようにして、個体の中で細胞の形の変化、動きを経時的に観察することができます。個体の中では細胞は決してばらばらに存在し、発生するわけではありません。細胞同士のコミュニケーションは時々刻々と変化することが重要です。生きたまま経時的に細胞を観察することで、ばらばらの状態の細胞では決してみられない、細胞同士の情報伝達の重要性を明らかにできると期待しています。例えば私たちの研究室では神経細胞だけで、光るたんぱく質を発現させ蛍光顕微鏡で観察しています(図1)。
突然変異体の研究から発生のメカニズムを知る
発生の遺伝的メカニズムを知るには、ある特定の遺伝子を欠損したときの結果を見ることが重要です。ゼブラフィッシュを用いれば、ランダムに突然変異を人為的に起こすことで変異体を大量に作出し、興味のある生物現象に異常のあるものを選び出すという方法が可能です。その後、異常の原因となる遺伝子を決定することで、ある生物現象に重要な遺伝子を発見することができます。当研究室では、Mind Bomb ( Mib ) 突然変異体を解析してきました。Mib 変異体の遺伝形式は劣性で成魚まで成育する途中で死んでしまいますが、神経細胞に注目してみてみると、Mib 変異体では神経が通常よりも多く出来ていることがわかりました(図1)。その後、Mibの原因遺伝子の探索に成功し、Mib による神経細胞の運命決定に重要な働きの分子機構を明らかにすることができました。私たちは、さらに突然変異体の単離を続け、脊椎動物共通の発生に重要な遺伝子を突き止めようとしています。
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| 伊藤特任准教授と研究室のメンバー |
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