遺伝子実験施設 The Center for Gene Research

 遺伝子解析学 Laboratory of Gene Analysis

Faculty and Research Theme


杉田 護教授

杉田 護(教授)

色素体、ミトコンドリア、レトログレードシグナリング、RNA編集、シアノバクテリア、オルガネラの起源

研究の概要

 色素体は光合成やアミノ酸・ホルモンの合成などの機能を担い、ミトコンドリアは呼吸を行い生命活動のためのエネルギーを生産する重要なオルガネラである。色素体とミトコンドリアには独自のゲノムDNAがあり、数10から100種ほどの遺伝子を持っていますが、これだけでは色素体やミトコンドリアの形成や機能の発現には不充分。そのためには、核ゲノムにある多数の遺伝子群の協調的な働きが必要です。私たちは、核ゲノムとオルガネラゲノムにまたがるオルガネラ機能の発現制御の仕組みと、その仕組みができあがってきた進化の道筋を明らかにすることを目指しています。このため、色素体とミトコンドリアの遺伝子の転写と転写後の発現制御に働く核遺伝子について、分子生物学的・生化学的な研究を進めています。

オルガネラ遺伝子発現をコントロールするレトログレーグシグナリング

 植物は、私たち人間や動物が生きるために必要な「食物と酸素」を提供してくれます。食物の素材や酸素は、植物細胞だけが持っている色素体の中で作られます。色素体は10数億年前に藍色細菌(シアノバクテリア)が真核細胞に取り込まれてできたものと考えられています。したがって、植物をつくったのはシアノバクテリアと言っても過言ではありません。一方、ミトコンドリアのもとになった生き物はαプロテオバクテリアと考えられています。
色素体やミトコンドリアの機能を発現したり調節したりするために、オルガネラの遺伝子と数千個もの核遺伝子が共同で働いています。私たちは色素体の機能発現の仕組みを明らかにするため、色素体と核のゲノムに内蔵された遺伝情報が、どのような分子メカニズムで発現するのかを調べています。実験材料としてヒメツリガネゴケ、ナンジャモンジャゴケ、シロイヌナズナ、単細胞性のシアノバクテリアを使っています。最終的な研究目標は「核と色素体とミトコンドリアのゲノム間コミュニケーションを介在するレトログレードシグナリングの分子実体」の解明です(図)。現在、とくに力を注いでいるのは、色素体とミトコンドリアの転写制御(RNA合成される過程での制御)と転写後制御(RNAレベルでの制御)についての研究です。このような研究は、植物の物質生産力と光合成能力の向上や二酸化炭素の削減に貢献するための基礎となるはずですから。

RNA編集の分子メカニズムを探る

 オルガネラゲノムの塩基配列がいったん転写された後に、特定のシチジンがウリジンに変換してしまう「RNA編集」という奇妙な現象があります。色素体では数10カ所、ミトコンドリアでは500カ所くらいのシチジンがウリジンに変換します。不思議なのは植物種によって、RNA編集部位の数が大幅に異なっていることです。植物種で共通のRNA編集部位もあれば、植物種に特有のRNA編集部位もあります。どのような仕組みで特定のシチジンを認識して ウリジンに変換するのでしょうか。私たちはこの不思議な現象の分子メカニズムを調べています。最近の私たちの研究で、植物に固有なペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質がRNA編集の鍵因子であることがわかりました。このような研究は地球上の生物進化の謎を解くヒントを与えてくれるでしょう。

朗らかな研究室の面々
References
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