当研究室は、グローバルCOE システム生命科学の展開:生命機能の設計の若手独立研究者支援によって、2008年4月に開設されました。
私達の研究の狙いは、人の視覚機能の維持に貢献することにあります。材料として使用するショウジョウバエは先駆的な遺伝学・分子生物学的な手法を駆使できるすぐれた実験動物です。人とハエの目の構造は一見全く異なっていますが、網膜発生、または、視細胞機能の多くに共通性がみられることが報告され、実際、ショウジョウバエは、網膜発生・網膜疾患の研究において強力なシステムとして認識されています。特に、ロドプシンの輸送の欠損や、光シグナル伝達の終了の欠損が、ハエと人の両者で網膜変性症の原因であることが分かっています。
ロドプシンの輸送機構
本研究では、光受容タンパク質、ロドプシンの輸送の機構を解明することを目的としています。ロドプシンの輸送機構を理解することは、網膜変性症の発症機構の理解に役立ちます。さらに、ロドプシンは複雑な細胞構造をもつ視細胞において、光受容膜に特異的に輸送されるので、その輸送機構は、細胞生物学的観点からも興味がもたれています。
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| Fig.1.Rh1 を積んだポストゴルジ小胞には rab11/dRip11/MyoV 複合体が結合している。MyoVにより小胞は、アクチン繊維の束に結合し、光受容膜へと輸送される。 |
ロドプシンは蛋白質部分を形成するオプシンと発色団レチナールから形成されますが、小胞体上で翻訳されたオプシンは、発色団11シスレチナールが結合して初めて小胞体から輸送されます。私達は、青色光によるレチナールの異性化を用いた、ロドプシンの輸送開始実験系を開発し、Rab1が小胞体からゴルジ体への輸送、Rab11/dRip11/MyoV複合体がゴルジ後の輸送に必要な事を生化学的・組織学的に示すことに成功しました(Satoh et al.,1997, Satoh et al.,2005, Li et al.,2007)。このように膜輸送を一期に開始させる事ができる蛋白質は、他にほとんどありません。現在、この過程に関与するさらなる分子の同定と解析に取り組んでいます。
色素顆粒の形成と運動のメカニズム
ショウジョウバエ視細胞内の色素顆粒は明暗で位置が異なり、光順応に貢献しています。明所では光受容膜の直下にあり、光受容膜内に入った光を吸収し、視細胞の光感度を低下させます。暗所では光受容膜から離れ、細胞質中に拡散していると考えられていました。私達は、暗視接眼レンズを用いて完全暗所固定した組織を観察し、色素顆粒が光受容膜から一定の距離を保ち、光受容膜基部のアクチン繊維(RTW) の外側に並んでいる事を見いだしました。 さらに、光による色素顆粒の光受容膜直下への移動に、ミオシンVとカルモジュリンが必要なこと、R a b 蛋白質の1つ、lightoidがミオシンVを色素顆粒につなぐ役割をもつことを見つけました(Satoh et al., 2008)。現在、私達は、色素顆粒を精製・プロテオミクス解析と、色素顆粒の形成・運動の欠損した変異体のスクリーニングを同時に行っています。 色素顆粒は、ヒトのメラニン顆粒、血小板密顆粒、分泌型リソソームとともにリソソーム関連オルガネラと呼ばれ、その形成の欠損はヒトではHermansky-Pudlak症候群(HPS)と呼ばれる遺伝的な病気を引き起こすことが知られています。同定された蛋白質と変異体の解析によって、色素顆粒の形成・運動の機構を明らかにすることにより、 Hermansky-Pudlak症候群の原因の解明と治療に役立てたいと考えています。
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| 佐藤特任准教授と研究室のメンバー |
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