タンパク質の一生と細胞が働く仕組み
生命活動の主役はタンパク質です。タンパク質はDNAという設計図に従って、アミノ酸がヒモのようにつながったできた高分子です。このヒモが折れたたまれて、特定の立体構造をつくると、機能を発現することができます。これまでは、タンパク質は合成されれば、自発的に折れたたまれて正しい立体構造を形成すると考えられてきました。ところが最近、細胞内で合成されたタンパク質は、簡単には一人前にはなれないことが分かってきました。そこで、生まれたタンパク質が不良品にならないよう、一人前になるのを助ける介添え役「分子シャペロン」が細胞内では必要となってきます。
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| ミトコンドリアへのタンパク質の配送経路 |
細胞の中には膜で仕切られた様々な区画、オルガネラが存在します。細胞が必要とするエネルギーを供給するミトコンドリアや遺伝情報のデータバンクの核などがそうです。オルガネラのおかげで細胞は、複雑な化学反応を同時に別々の場所で進めることができ、膜の内外に物質を分けることで、エネルギーを貯えることも可能になります。バクテリアなどの原核生物が動植物のような真核生物に進化するにあたり、細胞は内部にオルガネラを作るという戦略をとったのです。しかしこれらのオルガネラが正しく働くためには、タンパク質をオルガネラの使命に応じて正しく配置しなければなりません。そこで、生まれたばかりでまだ右も左も分からないタンパク質を正しい目的地に配送する、交通管制システムが必要となります。このシステムの主役が各オルガネラ膜に存在する「トランスロケータ」です。トランスロケータは、一つひとつのタンパク質の通行証をチェックし、膜の壁を通り抜ける通路を開き、内部の適切な場所へと送り届けます。トランスロケータがどうやってこれらの複雑な仕事を効率良くこなしているかに、大きな関心が集まっています。
働くべき場所に無事届けられたタンパク質の運命は、もう安泰なのでしょうか。実は細胞は温度異常・重金属・酸化などさまざまなストレスにさらされており、これらが原因となって再び不良品が発生します。そういう場合は、分子シャペロンを動員したり糖をつけたりして修復が図られます。しかしそれでもダメな場合は、ゴミ箱行きとなります。不良品をどうやって見いだすか。修復かゴミ箱行きかの判定は誰が下すのか。まだ多くの問題が未解決です。私たちの研究室では、細胞内のタンパク質の一生を支えるトランスロケータやシャペロンから成る支援システムが働く仕組みを、生化学・分子生物学・細胞生物学・構造生物学・遺伝学的手法を駆使して調べています。
細胞内で波瀾万丈の一生を過ごすのはタンパク質だけではありません。タンパク質だけでなく、RNAのような核酸の交通の意義や品質管理の重要性についても研究を進めています。さらに、分子シャペロンやトランスロケータの機能が、多細胞生物の個体レベルではどのような生理学的意義をもつのかという問題も重要です。その解決へ向けての第一歩として、モデル植物シロイヌナズナを用いた解析も行なっています。細胞社会とのダイナミックな関係の中で、タンパク質がどんな運命をたどっていくのか?そこから「新しいタンパク質像」を明らかにしようとしています。
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| 遠藤教授とラボのメンバー |
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