生殖は、生命現象の中で最もエキサイティングな局面の一つです。私たちの研究室では、植物や原生動物などを中心に、生殖を達成させるために鍵となる分子情報の解明を目指します。これにより、細胞間コミュニケーションや遺伝・発生に関わる、様々な生命普遍の機構の解明を目指します。
花粉管ガイダンスと重複受精における細胞間シグナリング
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| 花粉管ガイダンスの機構(左)とin vitroでの様子(右) |
植物の受精の研究は、穀物生産に直結する重要なテーマであるにも関わらず、長らく進んできませんでした。それは、卵の部分が、複雑な組織の奥に埋め込まれて観察することすら難しいためです。そこで我々、ユニークな植物トレニアを用いることで研究を進めています。トレニアでは、卵の部分が受精前の種子組織から外に飛び出しています。トレニアを用いることで、花粉管と胚のうという配偶体(ハプロイド世代)間での重複受精を、初めてin vitroで再現することに成功しました。
この系を基盤に、様々な新しい知見を世界に先駆けて明らかにしてきました。その一つが、140年にも渡って謎とされた花粉管ガイダンス分子(誘引物質)の研究です。まず私たちはレーザー細胞除去実験により、卵細胞のとなりある2つの「助細胞」が、誘引物質を分泌することを示しました。さらにこの物質には種特異性があることを証明し、助細胞を取り出して遺伝子発現を調べることで、ついに誘引物質を同定することに成功しました。誘引物質は複数のペプチドで、我々はこれらをLURE(ルアー)と名付けました。その成果はNature誌の表紙を飾りました。LUREの同定により、花粉管ガイダンスの研究は大きく展開しています。また我々は、花粉管の受精能獲得に関わる新たな生理活性物質AMORも見出し、同定を進めています。
この他、重複受精のライブイメージングについても、世界に先駆けて成功しました。イメージング技術に基づいた、新たな因子の同定も進めています。
ミトコンドリア核様体
ミトコンドリアは、生殖過程でさまざまな役割を果たすオルガネラです。その内部にある独自のDNAは、ヒストン様タンパク質で高次に折りたたまれた「核様体」として制御されます。我々は巨大なミトコンドリア核様体をもつ真正粘菌を材料に、転写や複製の機能を保持した核様体を、高純度で単離する技術を開発しました。これを基盤に、ミトコンドリア核様体の構造が、DNA機能発現や高次生命現象に果たす役割を明らかにします。また、その情報をいかして、医学的にも解析が望まれるマラリア原虫でも解析を進めています。
シングルセル解析による新しい生物学の展開
こうした一連の研究は、独自の技術開発により進められています。たとえば我々は、レーザーマイクロインジェクターという新しい装置を発明して、個々の細胞を操作することで研究を推進しています。また、シングルセルを狙って取り出し、次世代シーケンサーにより大規模遺伝子解析を行う技術の開発も進めています。このように、細胞1つ1つを狙って自由自在に解析することで、新しい生物学が展開できると期待しています。当研究室では、工夫を重視し、モデル生物からユニークな生物まで柔軟に使いこなし、オリジナリティーの高い研究を行うことを目指します。最新の研究内容については、研究室ホームページをご覧下さい。
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